目的はいたずら予防だけじゃない。トルク伝達効率が良いトルクスネジと専用工具
既存のネジの弱点を克服するために開発されたトルクスネジ
ナベ小ねじやキャップボルトなどの弱点を解消するために開発されたのがトルクスネジです。 六角の星形穴は直線ではなく、曲線で構成されています。この「曲線形状」が重要で、ネジと工具が「線」ではなく「面」で接触することでネジを傷めにくく、キャップボルトより強いトルクを伝達できる利点があるのです。 六角頭のボルトとメガネレンチやソケットレンチの接触部分も、線接触か面接触かによって締め付けトルクに違いがあります。六角頭のボルトの角部とソケットが点で当たる(点が連続すると線になる)と角部がナメやすいため、二つの角の中間部分の面で接触するようなソケット形状を採用したのが、有名工具メーカーのスナップオンが開発した面接触ソケットの特長です。 締め付けトルクが同じであれば、面接触はボルトやナットの角部に集中していた力を分散させることができ、さらにそれによって線接触よりも高いトルクで締め付けることが可能になります。 六角穴のキャップボルトと六角星形のトルクスボルトの間にも、この関係性が成り立ちます。キャップボルトとヘキサゴンレンチの接触部分は、基本的には線接触となります(一部面接触を採用したヘキサゴンレンチもあります)。 この場合、締め付けトルクを高くしていくとレンチの角部が六角穴に食い込み、最終的には穴をなめてしまいます。六角穴とレンチのクリアランスを小さくしていけばガタは減少しますが、両者の接触部分が線接触である点は変わりません。これに対してトルクスは星形形状の曲面部分同士が接触する面接触となるため、トルクが分散されるのです。 バイクでも自動車でも、最新モデルにおいて車体の軽量化は必須条件となっています。同じネジ径であれば、ボルトよりキャップボルトの方が頭部を小さくでき、締め付けトルクを大きくしたいのであればキャップボルトよりトルクスボルトの方が適しています。 さらにネジ径を細くしながら=ボルトの頭部が小さくなる中で強いトルクが必要であれば、キャップボルトよりトルクスボルトがさらに有利になってきます。このような変遷を経て、バイク界ではまずはヨーロッパ系メーカーから普及し、国産車でも徐々に採用例が増えています。 ちなみにトルクスという名称は、先述のアメリカのメーカーの商標登録であり、一般名称としてはヘクサロビュラ、ヘックスローブ、ヘクスローブなどと呼ばれています。しかしながら、絆創膏や食品保存用ラップフィルムといえば特定の製品名が思い浮かぶように、六角星形といえばトルクスというイメージが広く知られているのが実態です。