「うつ病、発達障がいを抱えたフランチャイズ希望者を5年間断り続けた」全国60拠点に広がる久遠チョコレートのその後
── 一人ひとりに対応するには、コストも時間もかかって大変では。 夏目さん:そう、大変ですよ。ちょうどいまも、上半期の進捗率が上がっていなくて、どうしようかと頭を悩ませているところです。だからといって、平均的な能力や技術を持つ人たちばかりを集めて、短期間で効率よく商品を作ったとして、その先にぼくらがどこへ行きたいのかというゴールが見えない。悩んでもがくことで人生にゆらぎが生まれて、それが豊かな人生を作っていくと、ぼくは思っています。
■不揃いでもみんなが暮らしやすい「雁木(がんぎ)」のような社会へ ── 「久遠チョコレート」の事業を通して、夏目社長が目指していらっしゃるのはどのようなゴールですか。 夏目さん:「できる、できない」「普通、普通じゃない」などいう区分けをしないで、あらゆる人を受け入れる社会を作ることです。モノサシをとっぱらって、シンプルに人と人が向き合う社会。そのためには、踊り場で立ち止まることも、ときには「右肩下がり」になることも必要じゃないかと思っています。
成長も大事ですけど、近視眼的な右肩上がり至上主義では、限りある資源が食いつぶされ、人は疲弊し、社会は窮屈になっていってしまう。 作りたいものや実現したいものが先にあって、「そのためにどうすればいいか」を考えるのが、本来やるべきことですよね。ぼくらがバレンタインのイベントに出店させてもらっている大阪の梅田阪急のバイヤーさんは、売り上げ目標よりも「お客さまをワクワクさせてください」と言ってくれます。「今、ワクワクしてくれる若い人たちが、10年後、20年後にメインの顧客になってくれるから」と、目先の売り上げよりもずっと先を見ている。もちろん売り上げ目標も、そのためのプレッシャーも必要ですが、長期的な視野を持つことはもっと大事です。そういう「どこへ向かっていきたいのかを忘れない経済」を、ぼくらは目指すべきなんじゃないかと思います。