「うつ病、発達障がいを抱えたフランチャイズ希望者を5年間断り続けた」全国60拠点に広がる久遠チョコレートのその後
──「どうすれば一緒に働けるか」を考えてこられた成果ですね。 夏目さん:人と人は、そもそも一人ひとり違いますよね。それぞれにできることとできないことがあるのが人で、それが折り重なって社会ができあがっている。 よく「障がい者と一緒に働くのはどうですか」と質問されるのですが、一人ひとり違うから「障がい者」とひとくくりにはできません。同じダウン症でも、自閉症でも、AさんとBさんは性格も、できることも違います。そもそもうちは、障がい者雇用をコンセプトにしているわけではありません。採用するとき、僕は相手がどんな人でも「この仕事をやりたい」「この会社に入りたい」という熱量で決めるようにしています。
だからこそ、一緒に働いている人に何かできないことがあれば、その人に合うように環境や仕組みを変えるのは、自然な流れだと思っているんです。
■重度障がい者が働きやすい「パウダーラボ」を設立 ── 具体的には、どのように環境を変えるのですか。 夏目さん:2021年に、重度の障がいがある人が働ける場として「パウダーラボ」という工房を立ち上げました。ここでは、チョコレートのフレーバー用に、乾燥させたイチゴやお茶をパウダー状にする作業をしています。チョコレートを作る作業にくらべれば、乾燥させた食材をパウダー状にする、いわば「壊す」作業は重度の障がいがある人にもやりやすいんです。
パウダーラボはビルの2階にあります。スタッフの1人に、トゥレット症という症状がある人がいて、本人の意思とは関係なく、飛び上がったり地面を強く踏みつけたりすることがあるんです。下の階の接骨院さんから、「患者さんが大きな音に驚いてしまう」と相談されたときは、床にマットを敷いたり、クッションのある靴を履いてもらったりしました。それでも解決できなかったので、別のビルの1階に「パウダーラボ・セカンド」を作って、そちらで作業をしてもらうことにしました。