NSXは1500万円の中古車も クルマを買って得する方法はある?
新車購入で“割り勘”負けしないために
実のところ、新車を買うオーナーと中古を買う人の関係は「割り勘」によく似ている。10年乗るのは割り勘じゃなくて全部ひとりで飲み食いすることだ。何を飲み食いするかによって「それなら半額払う」なのか「その店に行かれるなら倍付けでも払う」なのか「500円くらいなら払ってもいいよ」なのかが変わるということだ。では人はどんな時に割り勘比率が高くてもいいと思うのだろうか? 中古車市場を見まわしてみると、プレミアム価格は付かないものの、誰でも買えて値下がり率が極めて小さいクルマがある。こういう相場が硬いクルマの最右翼はプロボックスやハイエースなどの営業車だ。「何だ営業車の話か」と残念に思う必要はない。実はここに「得するクルマ選び」の原則が隠れているのだ。 プロボックスの場合は新車価格が税抜きで114万円。値引きを粘れば100万円に近い線が出るだろう。中古車の平均価格は約50万円。この種のクルマは営業車として使われるからピカピカのコンディションを望んでいては中古は買えない。だからちゃんと走りさえすれば、程度にあまり関係なく値が付く。多少バンパーにぶつけ傷があろうが、ボディに細かい擦り傷があろうと5年後に50万円で売ることは全然難しくない。高比率で割り勘に乗りたい人が沢山いる。 当たり前だが、営業車は買う人と乗る人が違う。社長や総務のエライ人が購入を決めて社員に乗らせるので、所有欲には微塵も左右されない。だからカッコイイとかキレイとかに興味はなく。ただひたすら道具としての機能しか求められないのだ。機能に問題無ければ、むしろ新車より1円でも安い中古を選ぶインセンティブが働く。お金を出す人と乗る人が違うクルマは、だから値落ちが少なく、いつまでも残存価値が評価されるのだ。
こういう図式で購入されるのは営業車だけではない。「ウチのかみさんの買いもの用に……」というケースもお金を出す人と乗る人が違うケースだ。ヴィッツやフィットなどのBセグメントハッチバックは10年くらいでは残存価値ゼロにならない。軽自動車も同じ。「走れば何でもいい」という買われ方のクルマの原則だ。ちなみにこの何でもいいは、言うほど何でも良くはない。オートマであること、ボディが小さくて運転しやすいこと、価格の安さや燃費の良さなどが漠然と含まれている。 こうやって「営業車やBセグメントハッチバックは新車購入がお得だよ」と書くと「よし、じゃぁその辺の中古の狙うか」という早とちりの人が出てくるので念のために書いておく。新車で買って値落ちが少ないということは、中古では買うと割高になるということだ。割り勘で片方が得だということはもう一方は損するのだから当然だろう。 中古で得をしたいなら、中古で欲しがる人が少ないクルマを選べばいい。例えばトヨタのプラッツやベルタ。ホンダのフィットアリアの様なBセグメントのセダンは狙い目だ。このクラスの新車を買う人は、安くて小さいクルマでもとにかくセダンじゃないと嫌だと言う人。年齢層も高く新車志向が強い。走行距離が少ない上、乗り方も大人しく、整備や洗車もちゃんとやる人が多いため程度は良い。 新車でそういう需要があるからこそメーカーはそういうクルマを作っていた(近年ほぼカタログから消えた)のだが、そう言うユーザーは中古を嫌うので中古になると需要が無くなる。どうせ買いもの用ならハッチバックの方が長尺モノも積めて実用的だし、後方の車両感覚が掴みやすく、駐車もカンタンだ。わざわざセダンを選ぶ理由が乏しいのだ。だから新車では需要があるが中古になると欲しい人が激減してしまう。 その結果中古車マーケットに出てくるBセグメントセダンは走行距離が少なく、キレイな状態であるにも関わらず値落ち幅が大きい。問題はそういう需要の少ないクルマをわざわざ買いたい気持ちになるかどうかだ。もちろん後で売ろうとすると査定は相当に厳しいことになる。