フォルクスワーゲン最小EV ”採算度外視” の約340万円で2027年導入へ 「Up!」後継車
若いユーザー取り込む「ロスリーダー」的存在
ドイツの自動車メーカーであるフォルクスワーゲンは、小型の新型EVの導入計画を正式に認めた。2027年に欧州価格2万ユーロ(約340万円)での発売を目標としている。 【写真】毎日使い倒せる気軽な「相棒」【フォルクスワーゲンUp!を写真で見る】 (21枚) このEVは一部メディアの間で非公式に「ID.1」と呼ばれており、ポロよりも小型のUp!に相当するAセグメントのエントリーモデルとなる。グループ内で部品を共通化し、フォルクスワーゲン、スコダ、クプラ、セアトの各ブランドから計4車種を発売する見込みだ。 フォルクスワーゲンのブランドCEOであるトーマス・シェーファー氏は、小型EVを導入する意義について次のように述べている。 「電動モビリティが普及するためには、特にエントリーレベルのセグメントにおいて魅力的なクルマが必要です。フォルクスワーゲンの目標は、すべての人に電動モビリティを提供することです。魅力的な価格で、技術、デザイン、品質、顧客体験の面で新基準を打ち立てるでしょう」 その一方で、シェーファー氏はコスト上昇と材料不足により、小型EVの生産はますます困難になっているとした。トヨタも今年初め、バッテリーコストの問題から欧州市場向けに小型EV(アイゴのEV版など)を導入する可能性は低いと示唆している。 これまでフォルクスワーゲンのエントリーモデルを担ってきたのは、昨年末に生産終了したUp!だ。欧州では通勤など日常的に使う「シティカー」として長く親しまれてきた。およそ3年の空白を経て2027年に発売予定のID.1とは、どのようなモデルなのだろうか。 技術開発責任者のカイ・グリューニッツ氏は、最初のデザインスケッチが完成し、開発が進行中であることを認めるとともに、Up!の後継車としてデザイン要素や属性を受け継ぐことになると示唆した。 「(ID.1の)使い方に関してはUp!に近いものになるでしょう。フォルクスワーゲンブランドのデザインDNAと機能性DNAを受け継ぎながら、低価格のクルマになります」 車名については詳しく言及されていないが、フォルクスワーゲンは顧客に親しまれるネーミングに大きな価値を置いていることから、Up!と命名される可能性もある。EVシリーズから「ID」のネーミングを廃止するという見方もあるが、本稿ではひとまずID.1と仮称したい。 グリューニッツ氏は価格設定について「より幅広い顧客層にとって手頃な小型車が必要」と述べ、「2万ユーロ以下」を目指しているとした。 「それがフォルクスワーゲンです。EVが正しい道であることをお客様に納得してもらうためには、その方向に進まなければなりません」 フォルクスワーゲンは新型車を36か月で開発するアプローチを採っていることから、ID.1は2027年より前にデビューする可能性が高い。実際、グリューニッツ氏は「2030年より数年前」には公開されるだろうと述べた。 専用のプラットフォームをベースに、コスト低減に重点を置いて開発される。しかし、必ずしも大きな利益を生み出す必要はなく、むしろブランドに若いユーザーを取り込む「ロスリーダー(採算度外視の集客目的の商品)」になるかもしれないという。 「単体で採算が取れるクルマにするべきか、それともファーストユーザー向けのクルマにするべきか。わたしは18歳のときにポロに乗り始めました。その後、ゴルフに飛び乗り、フォルクスワーゲンファミリーから離れることはありませんでした。初めてクルマに乗る人のためのクルマは、本当に重要なのです」 より大型のモデルから得られる利益で、小型車の生産を十分に支えられるようだ。
フェリックス・ペイジ(執筆) ジャック・ウォリック(執筆) 林汰久也(翻訳)