新幹線亀裂問題で川崎重工が是正策発表(全文1)現場の裁量や判断に依存
新幹線台車枠の製造不備の概要
金花:2017年12月11日、東海道新幹線名古屋駅構内で発生しました西日本旅客鉄道株式会社さま保有のN700系新幹線車両の重大インシデントにおいて、当社製の台車枠に亀裂が発生し、新幹線をご利用の皆さま、西日本旅客鉄道株式会社さま、東海旅客鉄道株式会社さまをはじめ、ご関係の方々に多大なるご迷惑とご心配をお掛けしておりますことをあらためて深くおわび申し上げます。 2018年2月28日発表「N700系新幹線車両台車枠について」の当社車両カンパニーの製造不備に関しては、4月に外部の有識者を招いた全社品質管理委員会を設置し、品質管理手法を用いた分析、指導により、その原因究明と当社が実施する再発防止のための是正策を検討しました。このたび、その結果がまとまりましたので、ご報告します。 当社の鉄道車両事業は、事業開始から110年にわたる歴史の中で、高速車両、通勤車両、新交通システム車両等、国内外の多様なニーズに対応できる生産体制を構築してきました。その中で熟練技能者の経験と技量をベースとした製造プロセスを確立するとともに、若手作業者への技能伝承、各製造工程での検査強化等の改善を図ってきましたが、一方で製造現場での裁量や判断に過度に依存する側面がありました。 今回の全社品質管理委員会の調査結果から、製造不備を生じさせた行動、判断とその原因は、2007年の製作開始時に過度な製造現場依存により品質管理に関して脆弱な点があったことに加え、2006年の側バリプレス加工の発注先変更時に、不具合を未然に防止するためのリスク管理不足が生じていたと判明しました。 ついては、当社は本調査結果を重く受け止め、再発防止のための品質管理の是正策として、主に次の4点を重点的に取り組みます。 マル1、過度な製造現場依存からの脱却を図るために、品質を確保する上で重要な設計ポイントを関係部門は共有できる仕組みを構築するとともに、製造作業を標準化、可視化することで問題を顕在化しやすくするKPSを徹底導入するなど、業務プロセスの見直しを実施する。 マル2、不具合を未然に防止するために、業務プロセスの見直しに加え、設計・製造等における変更点の管理と、起こりうる問題の抽出、事前対策を徹底し、リスク管理の強化を図る。 マル3、過度な製造現場依存から脱却し、リスク管理の強化を図るために、部門間連携の強化を推進する。 マル4、品質・安全等を含めた社内の教育体系を再整備し、教育内容の充実を図る。 また、N700系新幹線以外の国内外の新幹線、在来車両の台車枠は、構造、形状、製造方法が異なりますが、製造管理部門において作業指示が遵守されているかを調査し、図面指示どおりに作業していることを確認しています。なお、重大インシデント発生以降は、初号機もしくは初編成の検査過程における検査確認プロセスや、製品完成段階で確認が難しい部位を検査対象にする等の見直しを行い、品質の確保に努めています。 さらに全社品質管理委員会は、現在、全事業部門の品質管理体制の総点検を実施しています。当社グループの経営原則には、「高機能・高品質で安全な製品・サービスを世界の人々に提供する」を掲げており、品質管理体制の定期点検は、品質管理レベル向上に極めて有効であるため、今後も年1回の点検を継続して実施することで、全社を挙げて品質強化体制の強化を図り、安心してご利用いただける製品、サービスの提供に努めます。 最後に、N700系新幹線台車枠の亀裂発生原因につきましては、運輸安全委員会さまにより専門的調査が継続して行われています。今後も当社は亀裂発生の原因の特定や進展メカニズムの調査について、全面的に協力し、真摯に取り組んでまいります。 【連載】新幹線亀裂問題で川崎重工が是正策発表 全文2へ続く