戦闘機の幽霊? 目の前に現れた“零戦” 「自衛隊の怪談」から考えた国を守るという仕事
■自衛官たちが語った“不思議な体験”
市東さんは怪談が成立するプロセスを ①不思議な体験をする ②それを聞いた人が心霊的なものと解釈 ③その解釈が広がる と分析していますが、今回自衛官に取材をしていると、プロセス①の「不思議な体験談」にもいくつか行き当たりました。 伝聞の怪談とは違い「私は見た」という直接的な体験談になりますが、みなさんはどのように解釈されるでしょうか。 関東の駐屯地に勤務 陸上自衛官 Bさん 「息子が3歳のとき、知人の家に正月のあいさつに行きました。家を出るとご先祖のお墓があったので2人で手を合わせた。すると息子が“いま僕、兵隊さんを見た”と言うんです。帽子に星のマークがついた人や大きな眼鏡(航空眼鏡?)をかけた人がいたと。“兵隊さんはなにか言っていた?”とたずねると“うん、パパはまだきちゃだめだ”と言っていたと」 陸上自衛隊の化学科隊員だった宮澤重夫さんは生き物のような飛行物体を目撃したそうです。 元陸上自衛隊化学科隊員 宮澤重夫さん 「深夜の演習で対空警戒任務中、オレンジ色の発光物体を発見しました。アルファベットのL字型で下の部分は旗のようにゆらゆらとなびいていて全体が微妙に前後左右に動いている。空飛ぶ円盤ではなく生き物のように見えました。周囲の隊員も皆目撃し驚いていました。その謎の物体は30分ほど上空にとどまった後、山陰に消えました」
■ジェット戦闘機の前に現れた“零戦”
記者が聞いた体験談のなかで特に異色だったのが、現代に現れた“零戦”の話です。話してくれたのは航空自衛隊でF-4戦闘機のパイロットだったCさん。 元F-4戦闘機パイロットCさん 「あれは1990年ごろだったと思います。硫黄島(東京都)の周囲は海が広がり戦闘機の訓練に適しています。目撃したのは硫黄島から離陸して訓練空域に入り、対抗する戦闘機と訓練を始めようとしている時でした」 空中戦に入ろうとしたまさにその時、下の方を何かが、後ろから前に抜けていくのが目に入りました。 元F-4戦闘機パイロット Cさん 「こっちは時速700~800キロくらいで飛んでいるんですが、追い抜いていったので、“うん?なんだ?”と。訓練中止を宣言して確認のため加速して追いかけたんです」 近づくと航空自衛隊の戦闘機とは形が異なることに気がつきました。 元F-4戦闘機パイロット Cさん 「F-4やF-15とは明らかに形が違うんです。レシプロ機で色はグリーン、翼に日の丸が描かれていて私は詳しくないんだけれど零戦だと思いました」 零戦は旧日本海軍が主に太平洋戦争で運用した戦闘機。日本国内に飛行可能な状態の機体はないはずです。Cさんが確認のため真横にならぶとー。 元F-4戦闘機パイロット Cさん 「飛行帽をかぶり航空眼鏡をした人物がこちらを見たんです。(搭乗員が)見えたんです。その後、向こうはスーッと加速して上昇し視界から消えました。普通だったら追いかけるんですけどしませんでした。今考えるとなぜ追いかけなかったのか不思議です。それで訓練しなきゃと。なんのちゅうちょもなく訓練を再開した記憶があります」 太平洋戦争中、硫黄島の周辺では零戦に乗った多くの搭乗員が戦死しています。Cさんは自分が見た“零戦”は「この世に存在するものではない」と認識していますが、当時の事をあらためて振り返ると自分も通常とは違う状態に入っていた気がするそうです。F-4戦闘機にはCさんのほかにもう1人、航法などを担当するナビゲーターが搭乗していたのですがー。 元F-4戦闘機パイロット Cさん 「“零戦”を見たんですけど、それについて後ろ(ナビゲーター)と話した記憶がないんです。普段はよく会話するんだけど、後席が騒いだ記憶がない。今思えば異次元に入っているような、不思議な感覚です」 訓練を終えて硫黄島に着陸した後、Cさんは一緒にフライトした人たちに確認しましたがー。 元F-4戦闘機パイロット Cさん 「“いたよね”と話をしたんですがみんなに流されたんです。ひょっとするとあれは私の幻想だったのかもと思うときもあります。でも、見たという記憶は確かにあるんです」