戦闘機の幽霊? 目の前に現れた“零戦” 「自衛隊の怪談」から考えた国を守るという仕事
■「隊員たちは“怨念桜”と呼んでいた」演習場内に咲く桜
次に話を聞いたのは、関東の駐屯地で勤務する陸上自衛官のBさんです。 関東の駐屯地に勤務 陸上自衛官 Bさん 「近畿地方の駐屯地にある資料館は、かつては旧日本軍の兵舎を使っていて、あそこは出ると言われていました。また岡山県にある日本原演習場内には桜の木が立っていて、周辺で草刈り機を使っていたらケガをしたり、木に向かって小用を足した隊員とその小隊全員が発熱したりしたと聞きました。隊員たちはその桜を怨念桜と呼んでいたそうです」 Aさんが話してくれた硫黄島やBさんの日本原演習場については、インターネット上でも怪談として伝えられていることが確認できました。
■自衛隊の怪談 防衛省の見解は
自衛隊内だけでなく一般にも広まっている怪談について、防衛省はどのように捉えているのでしょうか。硫黄島に基地がある海上自衛隊に問い合わせたところ「お答えする立場にありません。(海上幕僚監部広報室)」との回答でした。 一方、日本原演習場の怨念桜については、関係者から“過去にそういった話はあった”という話も。 陸上自衛隊 関係者 「かなり前の話ですが隊員たちに怨念桜と呼ばれる桜の木が演習場内の道路脇にありました。私も先輩から“切ったり触ったりしない方が良い”と指導されました。その桜の木は自然災害で倒れたと聞いています。現存はしていないです」
■「自衛隊の怪談」民俗学の観点から
隊員たちの間で語り継がれる怪談はやはり存在するようですが、その背景には何があるのでしょうか。「自衛隊の怪談」に着目して、民俗学の視点から研究を続ける市東真一(しとう・しんいち)さんに話を聞きました。 記者 「自衛隊の怪談を研究するきっかけは?」 民俗学者 市東真一さん 「民俗学の中で有名な“学校の怪談”の研究があります。学校は子供たちが集まる特定の環境で、いろんな怪談が生まれ広がっていくのですが、自衛隊の怪談はそれに似ているなと思ったのがきっかけで研究をしています」 記者 「自衛隊の基地は、旧軍時代から使用されているものがたくさんありますが、これが怪談の多さにつながっているのでしょうか」 民俗学者 市東真一さん 「土地の記憶というものが背景の一つにあると思います。悲惨な歴史がある場所だと、ちょっとした現象も“心霊的なものの仕業だ”と考えがちになりますね。そして重要なのは、怪談というものは現象を体験した人の話とそれを聞く人の解釈、その2層構造で成り立っているということです」 記者 「どういうことでしょうか」 民俗学者 市東真一さん 「聞く人がいないと、それは個人的な体験でしかありません。体験談を聞いた人が、それは心霊的なものの仕業だと解釈をする。そしてそれを誰かに話す。それで初めて怪談として成立するのです」 記者 「自衛隊という組織の特色も怪談の多さに関係しているのでしょうか」 民俗学者 市東真一さん 「はい、隊員の数が多いだけではなく歴史などについて文化的な共通認識があります。また一般の社会に比べて集団で行動することが多く、それだけ話をする機会も増えます。学校の怪談もそうですが人が集まるところに怪談は生まれます。自衛隊の怪談が多いのはこうした環境によるものだと考えます」