「天狗になったら成長は止まる」卓球・張本兄妹の父が語る“ずっと伸びる子”の育て方
親に指摘されるより、自分で気づく方が身になる
人生を賭して打ち込めるものを早い段階で見つけ、着実に努力し、成果をあげると同時に、勉学も手を抜くことなく優秀な成績を収める。多くの親が理想とするであろう育ち方をしてきた張本兄妹だが、思春期ならではの難しさはあったのだろうか。 「あまりなかったですね。それらしいことと言えば、私がコーチとして帯同していた試合で、タイムを取ることを勧めた時、智和に拒否されたことが2回ほどありました(※卓球の試合では、コーチがタイムを要求しても、選手は必ずしもそれを受け入れる必要はない)。劣勢に立たされたので、ここでひと呼吸置いた方がいいと思って進言したのですが、智和は、『このままいける』と思ったのでしょう。結果的に、その試合には逆転負けしてしまいました。これは、私だけでなく他のコーチや監督に対してもあったので、親への反抗というわけではないと思いますが」 負けた後、親子でタイムについて話をしたかと問うと、「特にしなかった」と宇氏。 「私がいろいろ言うよりも、自分で気づく方がずっといいし、身に着きます。実際、この経験を通じて、智和はタイムをとることの大切さをわかってくれたようです」 自分の子供としてコントロールしようとせず、本人の意思を尊重する。張本家の子育ての根底にあるのは、「子供は、自分とは別の人間」という確固たる考えがあるのかもしれない。才能豊かな子供たちに対して、「もっとできるはず」などとハッパをかけたこともないそうだ。 「もっと上にいってもらいたいという気持ちがないわけではありません。でも、それを口にしてしまうと、子供がプレッシャーに感じ、良い結果につながらないような気がします」 その代わりに宇氏が口にするのが、「頑張っているね」という言葉。「朝から勉強をして偉いね」「毎日しっかり練習していて、すごいね」など、努力している過程を認め、褒めるという。 「私が一番大事だと思っているのは、継続すること。卓球も、勉強も、突然できるようにはなりません。毎日コツコツと、努力を重ねることで、上達するのだと思います。子供の継続を後押しするのは、『やりなさい!』と怒ることではなく、『頑張っているね』と誉めることだと思います」