故障者続出も3連勝健闘の与田中日の裏に「考えさせる野球」
中日が神宮で行われたヤクルト戦で3連勝、借金を「3」まで減らし4位に浮上する健闘を見せている。怪我人が続出してチーム状況は深刻。笠原、平田、福谷に続き、この3連勝中も、捕手の松井雅、好調だった福田、売り出し中の溝脇らが怪我で戦線を離脱した。だが、「ピンチをチャンスに変える」というポジティブな与田新監督の采配が際立つ。キーワードは「選手に考えさせる野球」だという。 日替わりヒーローが出る。ヤクルト初戦はドラフト3位の勝野が初勝利、第2戦は怪我の福田に代わって「2番・レフト」で使った2年目の伊藤康が3安打の活躍、第3戦は、1軍昇格3試合目のモヤに今季1号となる逆転3ランが飛び出し、プロ8年目に覚醒の兆しを見せている高橋周が月間8度目の猛打賞をマーク、巨人の“神様”故・川上哲治、オリックス時代のイチローらに並ぶプロ野球タイ記録を作った。 その背景には与田監督が仕掛けているアプローチがある。 「今の若い選手に“抑えろ、がんばれ、打て!”じゃダメなんです。僕もそうでした。結果論で監督やコーチから指摘されても“わかっていますよ、そんなこと”と内心考えていました。それでは、選手も変わらないしチームも変わらない。確かに野球はチームスポーツであり、長いシーズンを戦うのだからメンタルも大事になってきます。でも、アドバイスはより具体的なものでなければならないし、一番大事なのは、選手に考えさせること。そこには、いろんなアプローチが必要になってきます」 与田流の若手操縦術である。 では、そのアプローチの手法とは? 「野手で言えばひとつが打順です。今はクリーンナップだけは固定できていますが、なんとか得点力をアップさせたい、と打順を変え、人を入れ替えている理由の一つに、“なぜ僕がこの打順?”と考えさせることがあります。そして、もう一つのアプローチがベンチからのサインです。“なぜ、ここでこのサイン?”と考えさせることが重要で、こういうアプローチを地道に根気強く続けていくことで、考えることが浸透していけば、個人の技量が伸びることにつながると信じていますし、チームが変革していくことにつながると考えているんです。まだシーズンはスタートしたばかりですが、これを続けて、1年後に、どんな効果が生まれるか。期待しているんです」