佐津川愛美「俳優がウチワで扇いでもらえるのは偉いからじゃない」。照明、小道具、演出ーープロ達へのインタビューで知る"映画という共同作業の魅力"【インタビュー】
佐津川:皆さんがすごく真剣な目で作品を作り上げている姿に感動したんです。そういう一生懸命な大人の姿を初めて見たんです。この間、地元の静岡で子どもたちと一緒に短編映画を作ったんですが、その時、「監督や先生たちが一生懸命な姿を見られて感動しました」という感想をいただいたんです。まさに私が14歳の時に思ったことだったから、すごく嬉しかったです。 ――お子さんたちと短編映画を作るワークショップを振り返っていかがでしたか? 佐津川:もう、私の人生で一番楽しかった瞬間だなっていうぐらいの経験でした。子どもたちが目をキラキラさせながら、一生懸命、機材の使い方を教わって自分でやってみたり、意見を出して演出してくれたり、カメラワークも自分で考えてやってくれたりする姿に感動して、私が現場を好きな理由がここに詰まっているなって思いました。映画の現場って、それぞれの仕事をする方が作品に対してどう思っているかっていう意見がすごく大事なんです。意見を出し合って答えを探っていくことを子どもたちが自然とやってくれている姿を見て、胸がいっぱいになりました。 ――子どもにとって、自分の意見を持ってみんなで何かを作り上げる体験は貴重ですよね。 佐津川:共同作業だし、自分と相手の意見を大事にすることを学べるので、教育に取り入れてもらいたいなと思いました。親御さんからの感想で印象的だったのが「監督が一番偉いと思っていたけど、そうではなくて映画作りのいろいろなお仕事のひとつなんですね」という言葉で。監督や俳優が偉いと思われがちですが、子どもたちには、そうじゃないということも伝えました。たとえば、ワークショップ中は暑かったので、メイク部の方が、俳優部の子をうちわで扇いでくれていたんです。俳優部の子に、「これは、あなたが偉いからじゃないよ。汗かいてメイクが崩れちゃいけないし、俳優部は代えがきかないから体調を崩したら大変だから扇いでくれてるんだよ」と言ったら、その子は「なるほど」って言って、扇いでもらうたびに「ありがとうございます」って言っていました(笑)。それが伝わったようで嬉しかったです。 映画では監督や俳優が目立ちますが、後ろにはその何倍ものスタッフさんが関わっていることを、皆さんなんとなくはわかってはいても、理解まではしていないと思うんです。監督や俳優の力だけで作っているわけではないということも、ワークショップやこの本で伝わってほしいです。
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