佐津川愛美「俳優がウチワで扇いでもらえるのは偉いからじゃない」。照明、小道具、演出ーープロ達へのインタビューで知る"映画という共同作業の魅力"【インタビュー】
14歳で映画の世界に飛び込んだ俳優・佐津川愛美さんは今年、デビュー20周年。そんな記念すべき年、静岡や東京など4都市で「佐津川愛美映画祭」が行われた。9月にはその一環として、佐津川さんの地元・静岡の子どもたちと短編映画を作るワークショップを開催。さらに、次世代に映画の魅力を伝える取り組みとして、佐津川さんが映画作りのプロ20人に話を聞いた書籍『みんなで映画をつくってます』も発売した。
演出、照明、撮影、美術・小道具など、あらゆる映画の仕事に携わる人々に、仕事内容や大切にしていることを聞いた本書。書籍やワークショップを通じて、愛する映画の魅力を伝え、分かち合う時間は佐津川さんにとってどのような経験だったのだろうか。書籍作りの出発点から話を聞いた。
実は知られていない映画作りの仕事を伝えたかった
――書籍『みんなで映画をつくってます』を作ろうと思った理由は? 佐津川愛美(以下、佐津川):映画の世界って、知られていないことがすごく多いので、映画業界に興味のある若い方も含めて、映画の各部署のお仕事を伝えたかったんです。たとえば、映画は好きだけど、人とコミュニケーションをとるのが苦手だから現場で撮影をするのは難しいと思う方もいるかもしれないけど、実際は個人でできる仕事や、いろんなジャンルの仕事があるので、それも知ってもらえる本にしたいと思いました。
――皆さんがその仕事に就くまでのステップもさまざまで、面白かったです。 佐津川:専門学校で技術を学んだ方や、たまたまこの世界に辿り着いたら仕事が楽しくてずっとやっている方とか、いろんな背景を持った方がいる不思議な世界です。私、映画業界って、言ってしまえば誰でも入れる世界だと思っているんです。一方で、映画の世界ってちょっと難しいイメージがあるのかなっていうのも、20年やってきて感じることもあります。 でも、映画にそこまで詳しくなくても、現場が好きだから仕事をしている方も多くて。私自身、ラッキーなことに初めての撮影が映画の現場で、それがすごく楽しくて映画に携わっていきたいと思った人間なので、専門的な勉強はしていないんですが、だからといって入ってはいけない世界ではない、入ってからも学べる世界だと思っています。 ――完成した今、改めて、どういう本になったなと思いますか? 佐津川:この本には、映画業界がより思いやりを大切にする世界になってほしいという希望も込めたんです。映画を作っていると意見が食い違うこともあるけど、なぜこの人はそう言っているのか、その背景が理解できたら納得できることもあると思うんです。相手の仕事内容や、作品のためにやっているということを知れば、歩み寄れる部分も生まれる。だからこそ、映画作りの各部署の仕事を、私も知りたいし、映画の世界にいるみんなにも知ってもらいたくて。この業界で働いている方たちにも、相手を知る手がかりとして読んでいただける本になったと思うので、それはすごく嬉しいです。
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