海外ビッグクラブを目指す10代に求められる“備え”とは? バルサへ逸材輩出した羽毛勇斗監督が語る「世界で戦えるマインド」
現地でのショックな経験がさらなる原動力に
――芯太くん以外に、武者修行としてポルタから現地クラブへの練習参加をした選手たちの感想やエピソードなどがあれば、ぜひ教えていただけますか。 羽毛:うちから4人の選手がスペインのチームに練習参加したことがあるんですが、その4人は横浜F・マリノスJrユース、川崎フロンターレU-15、LAVIDAなどの強豪チームに加入が決まっていて、ナショナルトレセン・神奈川県選抜にも入るなど、日本では評価されていた選手だったんです。彼らが参加したチームは同年代のスペイン1部リーグの強いチームで、バルサをリーグ戦で倒したり引き分けたりする強豪でした。なかにはバルサに行くような子もいて、ものすごくレベルが高かったんです。 その練習後に、「参加してみてどうだった?」って聞いたら、「言葉をしゃべれないとやばい」というのが第一声でした。何を言っているかわからないから、練習内容が理解できなくて動きが止まってしまう。練習の温度感がわからない。プレーの面では、ドリブルや足元の技術など、自分の武器が通用した部分もあったけれど、体が大きくて速い選手が多い中で、言語の壁もあるので思っていた以上にできなかった、と。 ――その衝撃は、その環境に飛び込んでみないと味わえない感情ですね。 羽毛:そうです。その時一緒に練習参加した子の中に、ずば抜けた力を持った子がいたんです。親御さんのお仕事の都合でイタリアあたりから来ていたそうですが、練習ではその子がどんどんシュートを決めるので、見ているスカウティングの人がその子のところに行って話をしているんです。一緒に参加していたポルタの子は特に話しかけられることもなく、「早くヨーロッパに行く実力をつけるためにももっとやらなきゃ」と危機感を感じたようです。私としてはそれが狙いだったので 、そういうマインドを若いうちに持ってもらえてよかったと思います。 ――まだまだ若い選手ですし、われわれも冷静に温かく見守る必要がありますが、西山芯太くんは、今後、久保建英選手のようにバルサのカンテラで活躍し、将来的には海外ビッグクラブ、そして日本代表での活躍が期待される存在の一人になっていくと思います。ポルタの出身プレーヤーとして、どのような選手になってほしいと期待していますか? 羽毛:日本人選手としては、今まで久保選手がいろいろなことを塗り替えてきてくれたと思うんですけど、芯太には「お前がどんどん新しい道を作ってくれ」と伝えてきました。同時に、「日本人はこうだよね」じゃなくて、「西山芯太はこうだよね」と言われるような価値をつくってほしいと思いますし、それを次の世代に伝えていってほしいですね。 <了>
[PROFILE] 羽毛勇斗(はけ・ゆうと) 1994年12月24日生まれ、神奈川県出身。FC PORTA監督。横浜FCジュニアユース、横浜FCユースを経て、東海大学サッカー部を卒業。現役時代のポジションはMFで、U-16日本代表歴を持つ。大学卒業時に現役を引退し、2017年に指導者のキャリアをスタート。2019年に創設されたFC PORTAの監督として、日本トップクラスで活躍できる選手の育成に携わり、多くの選手をJリーグの下部組織などに送り出している。
インタビュー・構成=松原渓[REAL SPORTS編集部]