NY市場サマリー(17日)ドル上昇、利回り上昇 ダウ最高値更新
<為替> ドルが一時11週間ぶり高値を更新した。17日発表された米小売売上高は、米経済が底堅さを維持している様子を示唆すると同時に、連邦準備理事会(FRB)が今後1年半にわたり緩やかな利下げを実施するという見方を支えた。 終盤の取引で、主要通貨に対するドル指数は0.3%高の103.81。一時、8月2日以来の高値となる103.87を付ける場面もあった。 ドル/円は8月1日以来初めて150円を上抜け、0.4%高の150.24円。 マネーコープの北米ストラクチャードプロダクツ責任者ユージン・エプスタイン氏は「基本的に10月に入ってから見られる状況の継続」と指摘。「予想以上に強いデータを受け、ドルは上昇している。9月にFRBが0.5%ポイントの利下げを実施した時点では、ドルは弱含んでいたが、現時点でそれは解消されつつある」と述べた。 9月の米小売売上高は前月比0.4%増となった。市場予想の0.3%増を若干上回り、第3・四半期も経済が力強い成長を維持したとの見方を裏付けた。 また、10月12日までの1週間の新規失業保険申請件数は前週比1万9000件減の24万1000件と、予想外に減少した。 ユーロ/ドルは一時、11週間ぶり安値となる1.0811ドルを付けた後、終盤は0.3%安の1.0826ドル。 欧州中央銀行(ECB)は、ユーロ圏でインフレが一段と抑制される一方、景気見通しは悪化しているとの認識を示し、中銀預金金利を0.25%ポイント引き下げ3.25%とした。利下げは今年3回目。 関係筋によると、ECBは向こう数週間で経済指標に大きな変化がない限り、12月の次回理事会で今年4回目となる利下げを決定する可能性が高い。 LSEGによると、米金利先物市場では、FRBが92%の確率で11月に25ベーシスポイント(bp)利下げを実施するという見方が織り込まれている。今年は計約44bp、2025年にはさらに105bpの利下げが見込まれている。 約3週間後に迫る米大統領選も注目される。賭けサイト「ポリマーケット」では、共和党候補トランプ前大統領が勝利する確率が上昇している。 前出のマネーコープのエプスタイン氏は「トランプ氏勝利の可能性が高まったためドルを買うという『トランプトレード』が戻って来た」と指摘した。 トランプ氏の減税策や金融規制緩和、関税引き上げといった計画によってアジアや欧州の輸出国の成長にマイナスの影響が及び、これらの国が利下げに動けばドルが押し上げられる可能性があるため、トランプ氏の勝利はドルへの追い風になるとみられている。 <債券> 国債利回りが上昇した。一連の経済指標が堅調だったことで、FRBは積極的な利下げを継続するとの観測が後退している。 この日発表の経済指標では、9月の小売売上高が前月比0.4%増と、伸びは予想の0.3%増を若干上回った。また、12日までの1週間の新規失業保険申請件数は前週比1万9000件減の24万1000件。エコノミスト予想は26万件だった。 アネックス・ウェルス・マネジメント(ウィスコンシン州)のチーフエコノミスト、ブライアン・ジェイコブセン氏は「経済に影響を及ぼす要因が次々と出てきているが、これまでのところ米経済はうまく対抗している」とし、「米国の金融政策はなお制約的だ。利下げはブレーキから足を離すようなもので、アクセルを踏みこむようなものではない。(米国の政策金利は)景気を刺激も冷やしもしない中立金利からまだ程遠い水準にあるためFRBには利下げ余地があるが、急ぐ必要はない」と述べた。 FRBに利下げを継続する余地はあるものの、市場が見込む年内の利下げ幅は縮小しつつある。 CMEフェドウオッチによると、11月の会合で0.25%ポイントの利下げが決定される確率は90.3%と、前日の93.7%からやや低下した。金利据え置きが決定される確率は9.7%。 12月の会合で0.25%ポイントの利下げが決定される確率は73.6%と、前日の85.6%から低下した。 終盤の取引で10年債利回りは7.9bp上昇の4.095%。1日としての上昇幅は10月4日以来最大となる見通し。 2年債利回りは4.5bp上昇の3.98%。 2年債と10年債の利回り格差はプラス11.3bp。 30年債利回りは9.4bp上昇の4.393%。1日としての上昇幅は8月6日以来最大となる見通し。 <株式> ダウ工業株30種が上昇して取引を終え、過去5営業日のうち4営業日で終値ベースで最高値を更新した。 この日発表された小売売上高が予想を上回り、消費の堅調さを示唆する結果となったことを受けた。また、半導体受託生産の世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC)が強気な見通しを示したことで、半導体株に買いが広がった。 TSMCの米上場株は9.8%高と急伸。エヌビディアも0.9%上昇した。フィラデルフィア半導体株指数は 1%高となった。 9月の小売売上高は前月比0.4%増と、エコノミスト予想の0.3%増を上回った。週間の新規失業保険申請件数は、市場予想に反して減少した。 保険会社トラベラーズ・カンパニーズと資産運用のブラックストーン・グループは9%、6.3%、それぞれ上昇した。市場予想を上回る第3・四半期利益を発表したことを受けた。 S&P銀行株指数は0.1%高と、5営業日連続で上昇した。大手地方銀行の多くが第3・四半期の決算を発表し、M&T銀行とシノバス・ファイナンシャルが5%超上昇した。一方、トゥルーイスト・ファイナンシャルは3.5%下落、ハンティントン・バンクシェアーズも2.6%安となった。 <金先物> 米大統領選や中東情勢を巡る不透明感からリスク回避としての金の需要が高まり、3日続伸した。中心限月12月物の清算値(終値に相当)は前日比16.20ドル(0.60%)高の1オンス=2707.50ドルとなり、9月26日に付けた史上最高値を塗り替えた。 米大統領選の投開票が約3週間後に迫る中、民主党候補のハリス副大統領と共和党候補のトランプ前大統領が依然として接戦を繰り広げており、先行き不透明感から安全資産として知られる金に買いが入りやすかった。また、イスラエルのカッツ外相は17日、声明を出し、パレスチナのイスラム組織ハマスの最高指導者シンワル氏がイスラエル軍によって殺害されたと確認。金融市場の反応は割れたものの、金相場は買いで反応した。 <米原油先物> 米原油や石油製品在庫の減少を背景に、5営業日ぶりに反発した。米国産標準油種WTIの中心限月11月物の清算値(終値に相当)は前日比0.28ドル(0.40%)高の1バレル=70.67ドルだった。12月物は0.27ドル高の70.09ドル。 米エネルギー情報局(EIA)が午前発表した週間在庫統計(11日までの1週間)では、原油在庫は前週比220万バレル減と、市場予想(180万バレル増)に反する取り崩しとなった。ガソリン在庫とディスティレート(留出油)在庫の取り崩し幅もそれぞれ予想を上回った。これを背景に需給が緩むとの警戒感が和らぎ、原油は買いが先行した。前日まで4営業日続落した反動から、安値拾いの買いも入った。 ただ、この日発表された強めの米経済指標を背景とした対ユーロでのドル高がドル建てで取引される商品の割高感につながり、相場の上値は抑えられた。 ドル/円 NY終値 150.20/150.22 始値 149.62 高値 150.32 安値 149.47 ユーロ/ドル NY終値 1.0831/1.0832 始値 1.0864 高値 1.0873 安値 1.0812 米東部時間 30年債(指標銘柄) 17時05分 97*20.50 4.3924% 前営業日終値 99*05.50 4.2990% 10年債(指標銘柄) 17時02分 98*07.50 4.0945% 前営業日終値 98*27.50 4.0160% 5年債(指標銘柄) 17時05分 98*06.25 3.9041% 前営業日終値 98*15.00 3.8420% 2年債(指標銘柄) 17時05分 99*03.63 3.9761% 前営業日終値 99*06.00 3.9350% 終値 前日比 % ダウ工業株30種 43239.05 +161.35 +0.37 前営業日終値 43077.70 ナスダック総合 18373.61 +6.53 +0.04 前営業日終値 18367.08 S&P総合500種 5841.47 -1.00 -0.02 前営業日終値 5842.47 COMEX金 12月限 2707.5 +16.2 前営業日終値 2691.3 COMEX銀 12月限 3177.4 ‐20.0 前営業日終値 3197.4 北海ブレント 12月限 74.45 +0.23 前営業日終値 74.22 米WTI先物 11月限 70.67 +0.28 前営業日終値 70.39 CRB商品指数 281.7124 ‐0.0547 前営業日終値 281.7671