スカパーJSAT、「非地上系ネットワーク」で技術検証環境を構築–5G NTNの最適化へ
スカパーJSATは非地上系ネットワーク(Non-Terrestrial Network:NTN)の技術検証環境「Universal NTNイノベーションラボ」(NTNラボ)を横浜衛星管制センター(Yokohama Satellite Control Center:YSCC)に11月1日付で構築した。11月25日に発表した。 事業化に向けた活動を本格化させた「Universal NTN」は、赤道上空約3万6000kmの静止軌道(GEO)衛星に加え、より地球に近い、低軌道(LEO)や中軌道(MEO)などの非静止軌道(non-GEO)衛星、高度20kmの成層圏を無人で飛行する高高度プラットフォーム(HAPS)などNTNの通信インフラを組み合わせた多層的なネットワーク。 新たに構築したNTNラボは、Universal NTNの実現に向けた技術試験の拠点として「5G NTN」技術を中心に、衛星などを活用した新しい通信技術の発展を支えていくと説明する。5G NTNは、地上系と非地上系のネットワークを連携させ、世界中のあらゆる場所や空間で通信インフラを強化できる次世代の通信技術として期待されている。 今回構築したNTNラボは、携帯電話など移動体の通信規格や技術仕様を策定するプロジェクトである3GPP(3rd Generation Partnership Project)での5G NTN標準化に対応した技術試験などを自社でまかなうことが目的。同社が保有する静止衛星とYSCCの設備を活用し、NTN技術の商用化に向けた技術基盤の構築を目指すとしている。 NTNラボは段階的に拡張する予定。まずは、スカパーJSATの衛星や設備を活用し、パートナー企業の協力を得ながら、5G NTNの基礎技術を検証して、設備の充足化と高度化を進める。2025年度下期をめどに、さまざまな企業や団体が将来のユースケースに対応した実証試験や技術開発を共同で行えるようにNTNラボのオープン化を計画している。 3GPPは「リリース19」で一般的に衛星通信で使用されるKuバンド(Ku帯、周波数12G~18GHz、波長1.67~2.5cm)を5G NTNバンドに追加することを検討している(リリースは3GPPでの技術仕様の機能の単位)。NTNラボの初期試験として、Kuバンドと5G NTNを活用した試験を計画している。衛星通信での信頼性の高い通信環境を提供して、地上系と非地上系のネットワークがシームレスに連携できる技術の確立を目指すと説明する。
UchuBizスタッフ