塾で優秀な生徒たちに萎縮するようでは…「少数精鋭のエリート塾」で開成を目指したお受験ママの挫折 夫の言葉で痛感「開成に合う子、合わない子」
中学受験の難関校を目指す子の家庭の間で、近年、注目を集めているのが都内で増えている「少数精鋭の難関校対策塾」だ。Z会、早稲田アカデミー、enaなどの大手教育産業が続々とそういった少数精鋭のエリート塾ブランドを立ちあげている。難関校対策をやってくれるうえに面倒見もよいこともあり、人気を集めている。だが、せっかく入塾テストをクリアするだけの学力があっても、子どもの性格によって合う・合わないも変わってくる。『中学受験 やってはいけない塾選び』が話題のノンフィクションライター・杉浦由美子氏がレポートする「変わりゆく中学受験の塾選び」。【全4回の第4回】
* * * 少子化が進み、実質賃金は低下が続いている。そのため、中学受験生の数は減ると思われていたが、そうは落ちこまず、2025年入試も横ばいだと推測されている。理由として考えられるのは、共働き夫婦が「学童代わりに塾に通わせて子どもに合った学校に入れる」というケースが増えているからだろう。 それとは別に「なにがなんでも難関校」という方針のガチ勢も存在する。かつては高学歴専業主婦がいる家庭がガチ勢の中心だったが、今はその高学歴の母親たちもフルタイムで働いて、住宅費や子どもの教育費を稼ぐのに忙しい。 彼女たちのニーズは「難関校対策をやってくれて、かつ面倒も見てくれて、学童代わりにもなる塾」である。子どもの横についてしっかり勉強を見てあげる時間はとれないからだ。 そのフルタイムの働きママで「なにがなんでも難関校」という層が今、注目しているのが「少数精鋭の難関校対策の塾」である。Z会や早稲田アカデミー、enaといった大手教育産業が「難関校に特化したブランド」を立ちあげているし、関西の希学園も首都圏に進出している。 そういった塾は規模が小さいため、入塾テストも難しく、少数精鋭のエリート塾ともいえる。都内在住で共働き家庭のA子さんはそういった塾に息子を入れたが、困ったことに直面した。開成を目指す小学4年の息子の成績は上々だが、授業でほかの生徒たちが圧倒的な知識量を見せつけてくることに萎縮してしまい、塾に行きたがらなくなってしまったのだ。 息子は明るく活発で真面目。サッカーを習わせていたが、いつもボールに積極的に向かっていった。公文式の宿題もいわれなくてもやっていた。親が見張っていないとすぐに勉強をサボっていた自分とは大違いだった。 一方で、塾には満足していた。国語の記述問題が苦手なのだが、それもちゃんと対応をしてくれる。質問に行けば丁寧に答えてくれるし、息子は講師になついていた。しかし、息子がおびえた目をしているのを見ると、転塾させた方がいいとも思える。 「“そんなことですぐに辞めさせるのか、甘やかして”と夫にはいわれそうですが、本人がもう行きたくないというとどうしようもないですよね」 「教育虐待」という言葉が近年話題になっているが、現場を取材していると、「教育虐待ができなくなっている」ように見える。叱ったり、殴ったりして勉強をさせられる時代でもないからだ。 A子さんは息子を転塾させることを検討し始めた。 「夫に似て真面目な子なので、毎日机に向かって宿題をします。ほかの塾に楽しく通ってくれたら学力は伸びると思うんですよ」