塾で優秀な生徒たちに萎縮するようでは…「少数精鋭のエリート塾」で開成を目指したお受験ママの挫折 夫の言葉で痛感「開成に合う子、合わない子」
「息子は開成に入れたら潰れるタイプ」
四谷大塚や早稲田アカデミーには小学6年から始まる開成対策コースもある。どちらも開成の合格実績は半分を超えている。こういった塾に通わせればいいと思って調べていると、夫が意見をいってきた。 「中学受験そのものが合わないんじゃないか」というのだ。 夫は高校受験で、県立千葉高校に入学をした。千葉県の最難関校である。 「公立中学や塾ではトップだったのに県千葉に入ったらもっと優秀な連中が沢山いたんだ。勉強だけじゃなくてスポーツもできるとか、かっこいい奴とか。ものすごい本を読んでいて博識な奴もいた。 俺は『おお、こんなすごいやつらと同じ高校にきて面白いな』って思って楽しかったんだけど、中には萎縮してやる気をなくしちゃった奴もいたんだ。高校でもそうなるんだから、中学だともっとキツいだろう。万が一、開成中学なんて入学したらとんでもなくすごい奴がいっぱいいるよ。塾の段階で自分より優秀な連中を見て萎縮するキャラクターだと、開成なんていったら潰れちゃうんじゃないか」 息子は転塾して、勉強をし続けたら、開成に進学できるかもしれない。そこには小学校にはいなかったような優秀な同級生がいっぱいいるはずだ。
開成の文化祭でみた「容姿端麗なフルート奏者」
A子さんは息子と行った開成の文化祭で見たシーンを思い出した。 「中庭でアイドルみたいな容姿の生徒がフルートをソロで演奏していました。まるで映画のワンシーンみたいで感動しました。でも、よく考えたら、勉強して開成に入ったら、勉強ができるだけではなくて楽器もできて、かっこよくてと、フィクションみたいな同級生たちがいるわけです。そんな存在をみて萎縮する生徒もいて当然ですよね。そういうキラキラした同級生に対する劣等感をバネにして頑張るか、縮んじゃうかは性格によりますよね」 これは塾を取材していてもよく聞く話だ。優れた同級生を見て自信ややる気をなくす生徒と、反対に「自分は同級生たちみたいに優秀じゃないから頑張らないと」と奮起して努力しだす生徒がいる。受験指導をきめ細かにする塾の場合、そういった生徒の性格も把握してどの学校を受験するかをアドバイスしていくそうだ。 それを話すとA子さんはこう答えた。 「夫は中学受験を辞めろといいますがいろんな学校がありますからね。息子にも合う学校があるはずです。それに塾を辞めさせてどうするのかっていう話です。小学校の高学年になると学童には行きたがらないですから。無理をさせず、合った学校に行けばいいと思います」 A子さんは、ガチ受験から「合った学校に行けばいい」という方針にシフトして、今は転塾先を探している。 (了。第1回から読む) 【プロフィール】 杉浦由美子(すぎうら・ゆみこ)/ノンフィクションライター。2005年から取材と執筆活動を開始。『女子校力』(PHP新書)がロングセラーに。『中学受験 やってはいけない塾選び』(青春出版社)も話題に。『中学受験ナビ』(マイナビ)、『ダイヤモンド教育ラボ』(ダイヤモンド社)で連載をし、『週刊東洋経済』『週刊ダイヤモンド』で記事を書いている。受験の「本当のこと」を伝えるべくnote(https://note.com/sugiula/)のエントリーも日々更新中。