大ヒットで単館から異例の全国公開へ! 『侍タイムスリッパー』監督が語る制作秘話「スターで映画を作るより、映画でスターを作ったほうが面白い」
『カメラを止めるな!』に続く単館系映画のヒット作として話題の『侍タイムスリッパー』。本作の監督である安田淳一氏に直撃。自主制作の苦心、映画完成までの波瀾万丈、そして忘れ去られた時代劇への愛―。ここは京都府城陽市の田園、コメ農家の顔もある監督に、田んぼの前で話を聞いた! 【写真】コンバインでコメを収穫中の安田監督 * * * ■コメ農家兼映画監督 ――お米の収穫中にお邪魔してすみません! 安田 いえいえ、わざわざ京都までありがとうございます。 ――映画が大ヒット中でも日々の農作業は欠かせない? 安田 そら、僕は「コメ農家兼映画監督」ですから(笑)。 ――幕末から現代にタイムスリップした侍が、時代劇の「斬られ役」として活躍する『侍タイムスリッパー』。自主制作の単館映画ながら口コミで話題となり、9月13日からは全国公開も始まりました。低予算からの大ヒットということで、映画『カメラを止めるな!』(*1)の再来とも評されています。この反響は予想していた? (*1)監督&俳優養成スクール「ENBUゼミナール」の映画プロジェクトとして2018年公開。制作費300万円の低予算映画ながら、興行収入30億円を超える大ヒットに 安田 まったく。今年8月から「池袋シネマ・ロサ」(東京)で公開が始まったんですけど、最初から満席ではあったんです。ただ単館上映だから、映画好きな人たちが駆けつけてくれただけだろうと思っていました。 ――この拡大公開はどういう経緯で決まったんですか? 安田 某シネコンの編成の人が見てくれて、向こうから声をかけてくれました。お客さんの笑い声と上映後の拍手を体験して、「これは全国でもいけるんじゃないか」と思ったそうです。 また、配給会社の『ギャガ』さんからも拡大公開の声をいただいたり、各地のミニシアターからも上映依頼があったりしました。 まず、大手のシネコンと話を進めた上で、あらためて配給担当はギャガさんにお願いしたという流れになります。 ――監督としては、ヒットの要因はどこにあると? 安田 もちろん、『カメラを止めるな!』の成功を意識はしていました。笑って泣けて、最後に拍手が起こるような映画にすれば、低予算でもいけるかもしれないと。 上映館を池袋シネマ・ロサにしたのも、あの作品がこの映画館から人気になったからで。ただ、そういう戦略はぼんやりとしか描いてなくて、ほんまのところは、はっきり言って"運"ですね。 拡大公開のタイミングで、真田広之さん主演の『SHOGUN 将軍』がエミー賞を受賞したでしょう? それで時代劇に注目が集まって、テレビで一緒に紹介されたりもしました。いろんな偶然が重なって、たまたまうまくいったんです。 ■自腹で払った制作費と巨額の赤字