鹿島の岩政監督が川崎戦で就任後初黒星も「常勝軍団の看板を下ろしていい」と伝える異例ミーティングを行っていた真意とは?
しかし、いきなり2点のビハインドを背負う展開にも、鹿島の選手たちは絶対に下を向かなかった。ペナルティーエリアの左角あたりからMF樋口雄太が放ったクロスに巧みに頭をヒットさせ、後半7分の追撃のゴールに変えた仲間が、岩政監督が試合前に伝えた看板発言をさらに深く受け止めながら新体制下での初黒星を振り返った。 「岩政監督といまいる選手たちで、また新しいものを作り上げていくと思いました。なので、常勝というよりは、チャレンジしていくチームなのかなと。早い時間帯で2点差をつけられる逆境になってしまいましたけど、その後はゲーム運びを通じて自分たちのあきらめない姿勢を、自分たちの色を出せた90分間だったと思っています」 攻撃時にも意識させていた守備のタスクを、岩政監督は後半から取り払った。終了間際には身長182cmのDFブエノを、パワープレー要員として前線へ投入。対する川崎が身長186cmのMF山村和也を急きょ投入し、ほぼぶっつけ本番の5バックで1点を守りに入ったなかで、5分間のアディショナルタイムが終わりを告げた。 試合は1-2で負け、順位でも川崎に上回られて4位に後退した。首位マリノスとの勝ち点差は4ポイントのままだが、消化試合数は鹿島が3つも多い。残り7試合。タイトル奪回がやや遠のいたが、それでも川崎ゴール前に侵入する回数が増えた後半を「最後の絵まではつながった」と評価した指揮官は、さらにこんな言葉を紡いでいる。 「川崎に上回られたという言い方になりますけど、これは僕からしたら数年前に鹿島に通っていること。川崎がいいサッカーをしたけど、鹿島がゲームコントロールで勝った構図が逆転してきたな、と。僕としては、ここから時代をひっくり返す、というところに逆に手応えを感じた。前後半を通じてそれを見せてくれた選手たちに感謝しています」 目指すべきゴールまでの長い行程を考えれば、一時的に立ち止まる、すなわち負けることはさらに高く跳び上がるための糧になると岩政監督は潔く受け止めた。初黒星の責任を一身に背負い、理論と情熱を介して選手たちを鼓舞しながら、ACL決勝進出を決めて波に乗る浦和レッズをホームに迎える、9月3日の次節へ向けた準備を進めていく。 (文責・藤江直人/スポーツライター)