米国CPI グローバル市場を揺さぶる 米国物価指数の「かく乱」
■余剰貯蓄の上方修正 ところが、同年11月にサンフランシスコ連銀は前提となる経済データの修正を受けて余剰貯蓄が尽きる時期は「24年前半」になると見方を改めて、実際に24年1~3月期までは米国の個人消費は堅調に推移している。 国内総生産(GDP)などの主要マクロ経済指標を公表している米商務省経済分析局(Bureau of Economic Analysis、BEA)が、5年ごとの包括更新によって家計の所得や消費を含む過去の経済統計データを改定したことで、コロナのパンデミック(世界的大流行)以前の貯蓄トレンドが押し下げられた結果、パンデミック後の財政支援などで膨らんだ「余剰」と見なされる貯蓄がデータ改定前よりも大きくなったことが地区連銀含む多数の機関の経済見通し修正につながった。 ■外国パック旅行 今年に入り日本のCPIでも、事前に通知されることがなく、パンデミックにより停止した外国パック旅行の算定再開や東京都高校授業料における所得制限撤廃が反映されて、結果が市場の事前予想から大幅に乖離する事態を招いた。 また、その他の主要経済指標における算定方法などでもエコノミストや市場関係者などからたびたび不備が指摘されている。 ただし、上述のように統計の推計及び公表過程における問題は米国でも同様に発生しており、グローバル金融市場への影響は日本より大きくなる場合もある。日本だけでなく海外の経済指標を見る際においても、指標の調査方法などをできるだけ把握したうえで、算定方法の変更や結果の遡及(そきゅう)改定が行われる可能性も考慮して、景気評価や投資判断を行うことが求められよう。 (登地孝行〈とじ・たかゆき〉かんぽ生命シニアエコノミスト)