米国CPI グローバル市場を揺さぶる 米国物価指数の「かく乱」
その結果、3月のCPIで前月比プラス2.6%(前年比プラス22.2%)と大幅に上昇して全体を押し上げた一方で、PCEデフレーターでは同プラス0.1%(前年比プラス8.0%)にとどまった。CPIは消費者負担額のみで算定しているが、PCEデフレーターは保険料の支払いから受け取りを差し引いて算出しているため伸びが限定的となった。 米国のCPI上振れに関する他の主要因としては、高止まりしている持ち家の帰属家賃が注目されている。 持ち家の帰属家賃は、消費支出とされない住宅や土地の購入費用に代わって持ち家を借家と見なした場合に支払われる家賃を推計しているが、PCEデフレーターにおけるウエートはCPI(約25%)の半分程度となっていることが高インフレの粘着力を相対的に和らげている。 ■ウエート変更 持ち家の帰属家賃については、1月のCPIで前月比プラス0.6%と23年12月(同プラス0.4%)から伸びが再び拡大し、金融市場におけるサプライズの一つとなった。帰属家賃は、23年1月以降に対象地域の戸建て住宅比率に応じてウエートを調整(戸建て比率は22年の35%から23年1月に40~45%、24年1月に50%程度に引き上げ)しているが、戸建て住宅の賃料が集合住宅に対して高めに推移していたことから今年はより大きい影響が見られたと考えられる。 このCPI帰属家賃における1月分でのウエート変更は事前に通知されておらず、結果公表から2週間程度たった後にスタッフのメール誤送信で情報が流出したことを受けて、米労働省労働統計局(Bureau of Labor Statistics、BLS)がウェブサイトで明らかにした。 CPI算定方法変更の他に、昨年の家計の余剰貯蓄に関するデータ改定も、最近のグローバル金融市場に大きな影響を与えた。 23年8月にFRBを形成する12地区連銀の1行であるサンフランシスコ連銀が「家計の貯蓄率低下により、23年7~9月にも余剰貯蓄が底をつく」とのエコノミストの試算を公表したことを受けて、23年後半以降に個人消費及び米国経済が減速すると予想する市場参加者が増加した。