日本有事に安保で米軍は動くのか 法哲学者や元自衛隊幹部が語る懸念
隊員同士の信頼関係を
日米安保が発動されたとき、米軍はどの部隊が来援するかは決まっているという。その部隊との演習も行われており、例えば陸自では「YS=ヤマサクラ」という名の日米共同指揮所演習が毎年行われている。こうした共同での演習は、実際に日米安保を機能させるうえで、非常に重要だと山下氏は指摘する。 「日米安保といっても、紙切れの条約文にすぎません。結局動くのは人間です。人間同士のしっかりとした絆がなければ、真の同盟は機能しません。加えて、日米安保も『日本が攻撃されたときはアメリカが助ける』といういわゆる片務的なものではダメで、『アメリカが攻撃されたときにも自衛隊は助ける』という双務性にすべきです」
「私が指揮官のときに部下には『我々は勝てないかもしれないが、負けない戦をやる』とよく言っていました。有事で相手に勝つためには、米軍に来てもらうしかない。陸上自衛隊が血だらけになって戦い、何とか持ちこたえている、そこに米軍が助けに来る。そうなるには、日米のミリタリー間での信頼が必要です。アメリカとの共同演習の際には、隊員同士仲良くして、親友をつくれと指導していました。私自身、カウンターパートの軍団司令官とは会う機会を多くしました。食事をしたり、ワインを飲んだり、親交を深めて信頼関係をつくった。いざというときに『ヤマシタが血だらけになって一生懸命頑張っている。早く助けに行かないと』と思ってもらえるような強い信頼関係が必要なんです」 「そして、日米安保を実効性のあるものにするうえで、何より重要なのは『自分たちで守ろうとする意志』です。これがなければ、誰も助けてはくれません。それは自衛隊員だけの話でもありませんし、自衛隊にすべて任せたという話でもありません。国民も一緒になって守る、一緒に戦うという気持ちが必要なのだと思います。そうでなければ、自衛隊だって戦えないし、ましてや米軍が助けに来てくれることはないでしょう。それは、いまのウクライナ国民の姿と世界の支援を見てもわかることだと思います」