【社説】スポーツと地域 観戦楽しみ 愛着を育もう
福岡市はきょう、寒気を押し返すような熱気に包まれる一日となりそうだ。 一年納めの大相撲九州場所は千秋楽を迎え、プロ野球のパ・リーグを4年ぶりに制した福岡ソフトバンクホークスの優勝祝賀パレードが実施される。気分が高揚して、普段の日曜より早く目が覚めた人がいるかもしれない。 九州場所は15日間全てが入場券完売の「札止め」となった。史上初の5人による優勝決定戦に沸いた1996年以来で、一年を通じた全90日間の札止めも同年以来となる。 若貴ブームが去った角界は野球賭博や八百長問題、暴力事件と不祥事が相次いだ。深刻な客離れで、入場券販売を担う相撲案内所(相撲茶屋)のない九州場所は苦しんだ。 日本相撲協会は元大関若嶋津の松ケ根親方、元小結両国の境川親方、今年から元大関魁皇の浅香山親方と、担当部長に九州出身の理事を続けて起用し、人脈を生かして営業活動を強化した。適材適所の人事と言えるだろう。 会場の福岡国際センター正面の看板は「十一月場所」から「九州場所」に変え、館内にレストランがないためキッチンカーを集めた。夏前のイベントで九州場所をPRするなど、ファンを喜ばせる努力が集客につながった。 ホークスは日本一を逃したものの、リーグ戦の91勝、クライマックスシリーズ・ファイナルステージの3勝、日本シリーズの2勝で九州を活気づけた。 就任1年目の今季、若手を育てながら勝利を重ねた小久保裕紀監督と選手、ファンの結束の強さは、12球団でもトップクラスの観客動員数に表れている。パレードの沿道から送られる拍手と歓声を日本一奪還、育成のホークス完全復活につなげてほしい。 プロスポーツが地域にもたらす効果は大きい。 九州にはサッカーのJクラブが7県全てにある。昨季のYBCルヴァン・カップでクラブ初のタイトルをもたらした長谷部茂利監督が退任するJ1福岡の新たな歩み、J1復帰を目指す鳥栖をスタジアムで後押ししたい。 長崎市ではこの秋、通販大手のジャパネットホールディングスが整備した長崎スタジアムシティが開業した。J2の長崎とバスケットボールBリーグ1部(B1)の長崎が本拠を置く。 夏の国民スポーツ大会、全国障害者スポーツ大会のメイン会場として佐賀市に昨年開設されたSAGAアリーナは、B1佐賀の試合でにぎわっている。 どのチームも地元の人たちの身近な存在になり、幅広い年齢層に支えられている。選手にも親しみを感じているだろう。観戦を通して競技への関心が高まれば、次代の選手育成につながる。経済効果も小さくない。 九州各地でさまざまなスポーツを見る楽しみが、来年も増えるに違いない。
西日本新聞