猛暑で弱る日本のコメ 品種改良で乗り越えた富山産「富富富」
日本列島を襲う猛暑などの異常な気象、いわゆる「極端気象」。従来の常識にとらわれず、10年、20年先を見通して行動に移すことが、極端気象時代を企業が生き抜くポイントとなる。ヒントになるのが、高温に強いブランド米として富山県が開発した「富富富(ふふふ)」だ。 【関連画像】富富富の開発には15年以上の歳月を費やした(写真:富山県提供) 「1等米比率が61.3%と前年から17.3ポイント低下」 2023年の記録的な猛暑により、米粒が白く濁るなど甚大な被害が出たコメ。通常のコメは穂が出てから20日間ほど27度以上の気温にさらすと米粒が白濁する。コメは品質によって1~3等米と規格外に格付けされ、白濁した米は格付け低下の対象となる。 これに対し富富富は、30度程度までの気温に耐えられる特性を持つ新たな品種だ。猛暑が続く近年、コメ農家の注目を集め、24年度の生産量は1万2500トンと前年度から1.6倍に増える見込みだ。 開発のきっかけは00年前後。当時、じわじわと気温上昇の影響を受け、富山県内産コメの大部分を占めるコシヒカリの1等米比率が低下し始めていた。 1等米から2等米に下がると「玄米60㎏当たりの概算金は約1000円下がる」(県農林水産部市場戦略推進課)。当然、生産者の収入減にもつながってしまう。こうした事態に対処しようというのが富富富の原点だ。 富山県農林水産総合技術センター農業研究所の小島洋一朗課長は「コメ栽培の適地は北上している。栽培時期を変えるなどでは不十分で、コシヒカリ自体に手を加えないとダメだと考えた」と振り返る。 開発は根気の要る作業だった。12対の染色体のうち、高温に強い特長を持った部分のみを交配によってコシヒカリに取り入れる。理論上は明快でも、交配できるのは1年に1回のみ。特定部分を導入する作業には時間やコストもかかるからだ。そもそも、高温に強い品種を見つけ出すこと自体が大きな壁だった。 数多くの品種を探した結果、「見向きもされないような品種の中に光るものがあった」と開発を担ってきた小島氏はほほを緩める。高温耐性を持つ品種と、イネの主要な病害「いもち病」に強く倒れにくい性質とも掛け合わせることで、高温に強い富富富が生まれた。