中村時広・愛媛県知事に聞く(全文3)「地方分権、聞かなくなったが必要」
平成27(2015)年の国勢調査から、日本が人口減少局面に入ったことが明らかになりました。かつてない規模と速さで進む人口減少を、自治体の首長はどのようにとらえ、どのようなビジョンで舵取りしていくのか ── 。約30年前から人口減少傾向が続いている、愛媛県の中村時広知事に、人口減少時代との向き合い方や、国と地方の関係のあり方などを尋ねました。(2017年12月末取材)
人口減少は日本全体の問題「出生率を上げるか、外国人の移住しか道はない」
── 人口減少に対しての施策をお伺いしたところで、知事の向き合い方みたいなところをお伺いしていきたいんですけれども、この30年ぐらいの間に、いろいろなところで人口減少局面に入ってきて、例えば神奈川県ですとか、そういった大都市圏でありながらも、都市部ではないところで移住を促進するようなことをやっていたりとか、ほかの自治体も人口減少局面に入って移住促進なんかをやり始めたと、そういうことの影響というのは、どう感じていますか。 これは、日本全体がもう人口減少過程に入っていますから、出生率が1.4で続くと、単純計算でいけば、2人が亡くなって1.4人が残るという、単純な話で言えばですね。これが続いていったら、800年後に人口はゼロになるんですよ。だから、もうこれは全体の問題ですよね。 だから、この根本的な解決は、出生率を高くしていくか、外国人の移住者でカバーするかしか方法はないんですよね。だから、そこで一時的に取り合いといったらおかしいですけれども、競い合いが生じるのは、いたし方ないことだと思います。ですから、根本的な出生率を高くしていくというのは全体の話で、流出抑止、流入増加については、これはもう、しばらくの間は競争というのは仕方がないと思っていますね。
そういう中で、それぞれで特性が違いますから、愛媛県は先ほど申し上げましたように、産業には恵まれていますのでチャンスは幾らでもあるよと。しかも、住みやすいんですよ。僕は東京が長かったですけれども、最初30年前に(愛媛に)帰ったときは、そのスピード感の違いとか自然に恵まれた環境とかを前にして、随分違和感を当時は、逆に抱いていたんですね。今は逆ですね。もう東京は3日が限界です。もう早く帰りたいと。よくみんなこんなコンクリートジャングル、すし詰めラッシュの通勤、昔は私もやっていましたけれども、耐えられないですね。 例えば、愛媛県だと、1年中気候は温暖で災害が少なくて、ちょっと走れば海があり、ちょっと走れば山があり、ちょっと走れば里があり、海、山、里の幸に恵まれた環境にもあります。例えば、きょう、おかずどうしようかといったら、「ちょっととってこうわい」と言って、車で10分ぐらい海まで行って、さおを海に放り込めば、タチウオとか、そういう魚がパーンッとあがって、それを食べられるわけですよ。そういう環境というのは東京では味わえないですよね。 しかも、レジャーにしても、海のレジャーもあれば、山のレジャーもあれば、もっと言えばスキー場もあると。スキー場も愛媛県に3カ所、実はあって、東京の皆さんがスキーに行くといったら、1日、2日、3日かけて行くものというイメージがあると思いますけれども、我々が行くときは日帰りです。朝の8時ぐらいに、じゃあちょっと滑ってこようかなといって車で行って、ノーチェーンですよ。スタッドレスも要りません。ロープウェイでドーンと山まで上がって、家を出て8時、10時にはもうゲレンデに立っていますよ。1日中滑って、3時ぐらいまで、いや、もう存分に滑ったなといって帰ったら、夕方5時にはもう家にいるという、こういうライフスタイルができるんですね。 しかも最近は、日本中の、世界のサイクリストが我が県に押し寄せて来ていただいているんですけれども、日本で最も人気のあるサイクリングコース、世界の7大サイクリングコースにも選ばれたしまなみ海道があるんですね。 もうここを走るときの爽快感というのは、まず考えられない世界。ロシアの方々が2017年に来られまして、30、40人で走られたときに、天国ってこういうところじゃないかと言わしめたサイクリングコースなんですけれども、それがもう目の前にあるんですね。 だから、こういう環境で、さらに物価が、全国の県庁所在地の中では2番目に安くて(2003、2004年)、住居の家賃は日本一安くて(2013年)、通勤時間は日本で1番短くて(2011年)、こういう環境に身を置くと、ここで生活したい、ライフ、人生を送りたいと自分は心から思っているんですけれども、それを正直に情報を出していけば、きっと愛媛を選んでいただける方は増えていくんじゃないかなと思っています。 ── 他県が移住促進の市場に参入してきていたとしても、愛媛に魅力があるので負けることはない。 というか、気にしても仕方がないので、もう我々のいいところをどんどん出していくということをストレートにやっていけば、自然と目を向けてくれるんじゃないかなというふうに思っていますけれどもね。