おびただしい数の死体が浮かんだ―― まぼろしの空母「信濃」、なかったことにされた沈没 #戦争の記憶
編集後記
初めて蟻坂さんに話を聞いたのは5年前の2019年の夏。信濃に関する数少ない資料や福島県内の乗艦者の家族を取材する中で、戦争体験者でないと語れないモノがあると感じ、蟻坂さんに取材を申し込みました。今年の8月で96歳になる蟻坂さんは今もしっかりとした口調で信濃の記憶を戦争経験のない私たちに語ってくれます。 信濃に関する資料の収集は困難を極めました。蟻坂さんに信濃や戦争に関する資料を持っていないか尋ねると「信濃は横須賀から呉に向かう途中に沈没したので、呉で預けるはずだった自分の形見なども含めて全て海へ沈んでしまった」ととても悔しそうに話してくれました。こうしたことも信濃が戦後「まぼろし」となってしまった要因なのだろうと思います。 今回の取材を通して、戦争では多くの尊い命が失われるばかりでなく、生き残った人たちも心身に深い傷を負い、その人の人生そのものも大きく変えてしまうと強く感じました。 戦争体験者の方々の話を直接聞ける機会は年々少なくなっています。戦争を知らない私たちがその悲惨さや教訓を繋いでいくことは簡単なことではないですが、蟻坂さんら戦争体験者の思いを後世に伝えていけるよう、何ができるのか今後も考えていきたいと思っています。 ※この記事は、福島中央テレビとYahoo!ニュースによる共同連携企画です。
福島中央テレビ