「この店はエロゲーのモデルだ!」アダルトゲームメーカーと人気洋菓子店の間にぼっ発した”無断使用騒動”の真犯人
「アダルトゲームの舞台」と喧伝したのは神戸新聞
この経緯と使用態様を考えれば、「喫茶ステラ」が、コヤマの顧客に不快感を与えるおそれも、ましてやコヤマが「喫茶ステラ」に店舗外観の使用許可を与えているなどといった誤解を招くおそれも皆無である。もちろん違法性もない。コヤマの懸念はまったくの杞憂(きゆう)といってよいだろう。 むしろ、コヤマにアダルトゲームの印象を積極的に植え付けようとしているのは、神戸新聞の記事の方である。何せ記事は「アダルトゲームの舞台に〔…〕『パティシエ・エス・コヤマ』(三田市)の外観が無断で使われていることが分かった」などと断言したうえに、記事中のコヤマの店舗写真には、ご丁寧にも「アダルトゲームの舞台に使われたエス・コヤマ」というキャプションまで付しているのだ。 ユノスはコヤマの「コ」の字も出していないのに、新聞記事でわざわざ「この店はエロゲーのモデルだぞ!」と触れ回るヤツがあるか。まるで、誰も頼んでないのに「人気女子アナに風俗店バイトの過去!」などと書き立てる悪質なゴシップ記事である。これほど迷惑な報道被害もない。
著作権の問題もない
なお、ユノスは「著作権の問題はない」とも釈明しているので、この点についても簡単に述べよう。もちろん、同社のいう通り問題はない。まずゲームで使われるはずだったコヤマの入り口部分の外観は、建築物のデザインとして比較的ありふれているため、著作権自体が生じない可能性が高い。 さらに、仮に著作権が生じるとしても、建築物の著作権の効力は、その建築物を描いたイラストや、撮影した写真などには及ばないからだ(著作権法第四六条一項二号)。建築物をイラストに描くことなどは自由なのである。
真面目なユノスに比べて……
以上を踏まえると、ユノスってなかなかスゴい会社なのではないかと思う。問題の画像の使用に関しては、もとより、著作権法を遵守しているうえに、コヤマに配慮して看板のロゴも消し、穏当な使用態様にとどめているのだ。 そのうえ、神戸新聞がイチャモンのような記事を掲載したら、その日のうちに画像の差し替えを決断、発表。そしてそんなゴタゴタがあったにもかかわらず、当初予定していた1ヶ月後の発売日をきっちりと守っているのである。ひょっとして、ものすごーく真面目な会社なのでは!? ちなみに、一方のコヤマはというと、2018年と21年に、従業員に100時間以上の長時間労働をさせたことで労働基準監督署から二度の是正勧告を受け、それでも改善させなかったことから、2022年に書類送検されている(その後不起訴処分)。
弁護士JP編集部