「この店はエロゲーのモデルだ!」アダルトゲームメーカーと人気洋菓子店の間にぼっ発した”無断使用騒動”の真犯人
「ほのぼの聖地巡礼」のはずが、ファン同士の炎上騒動に
これについて、当地の有力地方紙である神戸新聞が「アダルトゲームが人気洋菓子店『エス・コヤマ』外観を無断使用」「『イメージ損なう』抗議検討」などと批判的に報じたことで、騒動になってしまった*1。ゲーム発売日の約一ヶ月前の11月のことだ。 *1 『神戸新聞』2019年11月22日付「三田の洋菓子店『エス・コヤマ』外観 アダルトゲーム 無断で使用」 報道を受けて、ユノスはその日のうちにコヤマを参考にした背景画像はすべて差し替えると発表。実際に画像を差し替えて予定通りの発売日に発売された。これが事件の顛末である。 その後、一連の経過をニュースサイトなどが後追い報道すると、ネット上ではユノスの無断使用を非難する意見と、逆にコヤマをクレーマー扱いし、「アダルトゲームユーザーを差別している」などとする意見がぶつかり、炎上状態となったのである。しかしこの件、ユノスもコヤマも悪くない。悪いのは、エセ著作権騒動をたきつけた神戸新聞であり、両者は等しく報道被害者である。
コヤマの不安は当然だ
本件で議論を呼んだのは、「アダルトゲーム内のステラ画像は、コヤマに不利益をもたらすのか?」という論点である。これについて、神戸新聞は、コヤマのコメントとして「年齢制限があるゲームの性質上、客に不快感を与えかねない」「許可していないということは皆に知ってほしい」と報じている。 コヤマとしては、とにもかくにも、客に不快感を与えないかということと、アダルトゲームに使用許可を与えたと誤解されたくないという懸念を感じていることがうかがえる。この懸念はもっともだ。どんな店でも、新聞記者から「アダルトゲームにおたくの店舗の外観が使われるようですよ」などと突撃取材を受けたら、こうした漠然とした不安を抱くだろう。
大して似てないじゃん!
しかし、実際のコヤマの写真(左)と、差し替えられる前の「喫茶ステラ」のデザイン画(右)を見比べてほしい。まず、大して似ていないのである。形状自体は近く、モデルにしたことはうかがえる。だが屋根の色や模様が全然違うし、窓の大きさも異なるではないか。 実は、コヤマはゲームの発売前に改装しており、「喫茶ステラ」が参考にしたのは、改装前の旧店舗デザインだったのだ。この旧店舗と、ゲームで使われた画像は、確かによく似ていた。しかし、それでも看板のロゴなどは消されているうえに、ゲームが発売される12月はおろか、神戸新聞が報じた11月の時点でさえ、この外観の店舗はもはや存在しなかったのである。 加えて、ゲーム内にはコヤマの「コ」の字も出てこないし、ゲーム雑誌や宣伝媒体などでも「コヤマをモデルにしました」などとは一切言及されていない。さらにいえば、画像差し替え後のゲームをプレイする限り、喫茶店の外観画像は会話シーンでの背景として使用されており、性的な場面で使われているわけではない。ゲーム全体としても、比較的穏当な表現の純愛ゲームである。