医師が教える…介護問題、家族が施設に入れるタイミングで、じつは「やってはいけない」こと《主体者は誰か》を考える
施設に入らないという選択
ここまで施設介護の話を中心に書いてきましたが、もちろん、施設には入らないという選択もあります。本人が「家で死にたい」と強く希望する場合や、ご家族が「家でみてあげたい」と思う場合は、たとえ要介護5の重介護になっても施設に入る必要はありません。 「施設に入らない」=「施設と無縁」ではありません。施設に入らない人こそ、デイやショート、訪問サービスなど上手に施設を使って介護していただきたいです。食事は配食サービスや、朝食、夕食を出してくれるデイサービスが利用できます。入浴もデイや訪問入浴で可能です。 在宅介護の強い味方なのに、知っている人が少ないサービスに「小規模多機能型居宅介護」というものもあります。これは地域密着型で、訪問、通い、宿泊の3つの介護サービスを組み合わせて提供する介護サービスです。多機能サービスを利用するなら、ケアマネージャーを含めすべてのサービスをその事業所でお願いする必要があります。 たとえば普通のデイは何曜日に行くか決めて通いますが、小規模多機能は「今日は通いで」「今日は家に来て」など利用者の希望に合わせて柔軟に利用できます。「今日は病院に行くのだけれど、病院の玄関までの階段を上がる時に介助に来て」のようなピンポイントの介助もお願いできます。 朝の内服介助に行って、夕方もまた内服介助に訪問する、といった感じで一日に何回も細かく訪問してもらうことも可能です。ショートステイのように施設に泊まることもできます。宿泊や食費以外は利用料金に含まれていて、何回来てもらっても何回行っても定額料金(施設による)です。 ただし利用回数が少ないのであれば反対に割高になります。 何度も訪問してもらうために、近くに事業所がないと利用できませんが、在宅にこだわるならぜひ相談してみてください。このサービスに細かく医療サービスがついた看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)という事業所もあります。 …つづく<20年間「介護老人保健施設に勤めた医師」が衝撃を受けた、妻を看取った夫の「忘れられない一言」>では、後悔が残らない介護はないからこその向き合い方をお伝えします。
田口 真子