【M&A】「一部の事業だけ売却したい」「手元に残したい資産がある」場合の譲渡手法とは?売り手オーナー経営者が知るべき“選択肢”
事業売却における活用事例
ここまで会社分割の基本的な特徴について解説してきましたが、文章だけでは理解しにくいところがあると思います。ここからは、図解も含めた具体的な会社分割の活用事例をみていきましょう。 【事例1】分割型新設分割による売却対象事業の切り出し(図表1) 事例1では、売却したい事業が会社の一部である場合に、対象事業を分割型新設分割で切り出します。事業売却にあたっては、新設して対象事業を引き継ぐ分割承継法人の株式を譲渡します。株式対価はオーナー個人が受け取ることになるので、株式譲渡益に対する20%の課税が生じます。個人で対価を受け取りたい場合などに適した手法といえるでしょう。 事例1のように売却対象事業を切り出すほか、譲渡対象外にしたい資産を切り出す場合にも、同様の譲渡手法を活用することができます。この場合、譲渡対象外資産を切り出した分割承継法人は資産管理会社として残し、引き続き余剰現金や不動産を運用していくといった活用法が考えられます。この場合、継続保有要件のほか、金銭等不交付要件(分割対価が分割承継法人株式のみ)、按分型要件(株主の保有割合が変わらないこと)を満たせば、適格分割として譲渡対象外資産に関しての課税関係は生じません。 【事例2】分社型新設分割による売却対象事業の切り出し(図表2) 事例2では、分社型新設分割により対象事業を切り出し、分割法人の完全子会社として分割承継法人を新設します。事業売却にあたってはこの完全子会社株式を譲渡します。株式対価は分割法人である会社が受け取ることになるため、株式譲渡益には法人実効税率が適用されます。個人の株式譲渡益に対する税率(20%)に比べて高い税率となりますが、分割法人において譲渡益を相殺する損金計上が可能な場合などにおいては、税負担を軽減できる可能性があります。 作田 隆吉 オーナーズ株式会社 代表取締役社長
作田 隆吉