ネーミングライツや給与明細に広告……財政難の自治体で“広告作戦”拡大
財政難の地方自治体で、ホームページのバナー広告や公共の建物の命名権(ネーミングライツ)で稼ぐ“広告業”が盛んになっています。自治体の予算総額に占める広告の「売り上げ」額こそ目立ちませんが、多額の借金がある上に税収の伸び悩みに頭を抱える多くの財政担当者は「たとえ千円、1万円でも収入を」と懸命。自治体の媒体への広告掲載については一部で論議があるものの、広告作戦は拡大の気配です。財政構造改革の取り組みの一つに広告業を位置付けている長野県に現状を見てみると……。
地元企業の名を冠した施設名目立つ
長野市にある同県最大規模のホール「長野県民文化会館」。大ホールは2173人を収容し、オペラや歌舞伎などの伝統芸能のほか、人気アーティストやアイドルのコンサートも行われる同館の正面には「ホクト文化ホール」の名称が掲げられています。2009年4月から名称変更されました。また、松本市にある県の松本文化会館も「キッセイ文化ホール」との名称です。いずれも地元の有名企業がネーミングライツを得て、自社名を冠したホール名としています。 長野市郊外の戸隠高原に建つ県の戸隠森林学習館も、壁面に「八十二森のまなびや」の表示が。長野県の八十二銀行のネーミングライツです。このほか県の薬草栽培試験地に薬剤師会関係のネーミングライツが設定されるなど、主要な県施設では県民にもよく知られた企業や団体の名称が目立ちます。
変わり種では、歩道橋に会社名を掲載した例も。長野市御幣川(おんべがわ)の横断歩道橋には「前田製作所前横断歩道橋」の文字が記されています。企業の門前に架かる歩道橋でPRするユニークな例です。このほか一部の県営野球場や県有林でもネーミングライツが設定されています。
公用車や県庁の建物内にも広告掲載
長野県では、ネーミングライツのほかに、▽職員の給与明細書に広告掲載、▽公用車のボディーに広告掲載――など多彩な広告作戦を展開。長野市にある県庁では、エレベーターホールの壁面や、エレベーターの中にも広告が張り出されています。 4月から始まった長野県の2016年度当初予算は約8756億9000万円で、前年度当初比で約62億円増。人件費や社会保障関係費などの毎年必要な経費は増える一方、国からの地方交付税などが減るため、主要な一般財源の総額は前年度より30億円減る見通し。県の台所事情はきゅうくつになります。 このため県財政の貯金にあたる財政調整のための基金は前年度より28億円多い88億円を取り崩すことに。取り崩しが続いて2015年度末の残高536億円が20年度には163億円まで減ってしまう見込みです。