変形性膝関節症の新治療法 「末梢神経ラジオ波焼灼療法」とは?…痛みが半分以上軽減した割合7割超
慢性的に膝が痛む変形性膝関節症は、加齢に伴い誰もが発症する恐れのある病気です。痛みを抑える薬や適度な運動、人工関節に入れ替える手術などが治療の柱ですが、痛みを感じる神経をラジオ波で焼く治療法に公的医療保険が2023年に認められ、選択肢に加わりました。(鈴木恵介) 【図解】変形性膝関節症の新治療法「末梢神経ラジオ波焼灼療法」とは?
末期には歩行困難
変形性膝関節症は、膝関節の軟骨や半月板がすり減り、関節内の滑膜に炎症が起きたり、骨同士が擦れ合ったりして痛みが生じます。初期は立ち上がりや歩き始めの時だけですが、中期には正座や階段の上り下りにも痛むようになります。末期には安静時にも痛んで歩行が困難になります。高齢の女性に多く、発症すると要介護のリスクを高めます。
国内では約800万人が膝の痛みに悩まされ、症状を自覚していない人も含めた患者は約2500万人と推計されています。 治療はまず、関節への負荷を軽減するため膝関節周辺の筋肉を鍛えたり、鎮痛剤で痛みを抑えたりする保存療法を行います。それでも痛みが治まらなければ、人工関節に置き換えたり、すねや太ももの骨を切り込み矯正して膝関節にかかる力のバランスを整えたりする手術療法を検討しますが、持病などにより手術に支障のある患者への治療法がないことが課題でした。
治療は片膝30分
23年6月に保険適用された「末梢(まっしょう)神経ラジオ波焼灼(しょうしゃく)療法」は直径約2ミリの電極針を膝に刺して、膝関節の周りにある痛みを感じる主要な神経3本を焼きます。治療時間は片膝で20~30分程度。周辺にある運動神経や感覚神経と取り違えないよう、刺激を与えるテストを事前に行いラジオ波で焼く神経を特定します。 治療から半年後に痛みが半分以上軽減した割合を比較した米国での臨床試験では、ラジオ波治療が74%で、関節内へのステロイド注射による保存療法(16%)を大きく上回りました。 東京都内に住む女性(82)は10年以上前から膝の痛みを抱えていました。最近では階段の上り下りやトイレで立ったり座ったりする際にも痛みましたが、手術が不安で保存療法を続けていました。都内の大学病院で24年7月、ラジオ波治療を受け、「治療の時にも痛みはありませんでした。寝返りをするだけでもつらかったのが楽になりました」と喜びます。 治療の効き目の持続期間は1~2年とされますが、主要な神経のみを焼いており、痛みが消失するわけではありません。痛みが軽減しても、膝関節の構造が改善したわけではなく、過度な運動で膝への負荷が増すと悪化を早める恐れがあります。様子を見ながら日々の運動量を増やすことが必要です。順天堂大整形外科主任教授の石島旨章さんは「保存療法を続けながら痛みが抑えられる期間を延ばし、日常生活の活動性を上げることが重要です」と指摘します。 加齢に加え、膝への負荷を高める肥満も変形性膝関節症のリスクです。予防には適正な体重の維持が重要です。変形性膝関節症の診療に詳しい樫本病院(大阪府)顧問の赤木将男さんは、バランスのとれた食生活を心がけ、日頃の運動量に応じて適度に体を動かすよう呼びかけています。