学校現場への影響も甚大「共同親権」何が起こる? 進路選択や特別支援、不登校対応なども混乱か
不明瞭な「急迫」「日常の行為」が子どもに与える影響
では、共同親権となった場合、どのような問題が起きてくると考えられるだろうか。 民法上、親権には、教育、監護、居所指定、財産管理、法定代理等の権限が含まれるとされている(民法820~824条等)。よって、ひとたび離婚後共同親権となった場合、教育、進学、医療、居所の指定など、子どもにとって重要な事項は父母双方の同意なくして決定できないことになる。 両親の意見が合わない場合は裁判所が決定する、と改正法は規定する。しかし、家庭裁判所は深刻な人手不足で、子に関する事件の裁判所の平均審理期間は現状約1年である。子は進学や住所変更、入院手術などを望んでも、両親のどちらかが反対すれば、身動きが取れず、結果として機会を奪われることになろう。影響は甚大だ。 改正法は、共同親権となった場合でも、子の利益のために「急迫の事情」がある場合や「監護及び教育に関する日常の行為」については単独での親権行使が可能だと規定する(改正法824条2)。しかし、例外規定が定める「急迫」「日常の行為」は不明瞭な概念だ。 国会答弁では、「日常の行為」とは、食事や子の習い事の選択、アルバイトの許可、子の心身に重大な影響を与えないような治療やワクチン接種など、と説明された。 一方、幼稚園や学校の選択、進学・就職の選択、特別支援学級への進級等の決定、生命に関わる医療行為、子の住居の決定、就職の許可などのように、子に対して重大な影響を与え得るものについては、日常の行為に該当しないという。居住に関しては、学区が変わらない近隣への転居でも「日常の行為」に該当しないという。 スマホの契約、未成年者の法律行為の取消、パスポート取得も基本的に双方の親の関与が必要だとする。こうして見ると、子にとって重要な決定はほぼ、「日常」の範疇から漏れる。同時に、「日常の行為」であればいずれの親も単独親権行使ができる規定のため、習い事などをせっかく決めても他方の親が勝手に取り消すこともできるという問題もある。 一方、「急迫」をめぐっては、国会審議で曖昧な答弁が続いた。「急迫」の例として、医療については緊急手術や人工妊娠中絶、進学については願書提出直前や期限のある入学手続き、居所についてはDVや虐待からの避難が挙げられたが、いずれも極限事例だ。 また、DVからの避難は「急迫」だというが、被害者が立証の負担を負うことになる。さらに、転勤、再婚などの事情による子を連れた転居も「急迫」にならないとすれば、離婚後の生活は成り立たない。