ストレスのない豚はおいしいに決まってる! 熊本県菊池の「走る豚」はみんな楽しそうだった
熊本市の隣にある、熊本県菊池市。阿蘇山のきれいで豊かな水に恵まれ、若い世代の農家がさまざまな取り組みをしている。 おいしそうな放牧豚と、「渡辺商店」の人気商品はこちら 他県から就農してくる人もいるし、菊池に生まれて新たなチャレンジを始める人もいる。いずれも、自然と共存する方法を選び、環境を大事にしているのは共通だ。 こんなに美しい阿蘇山を毎日見ていたら、農薬を使おうなんていう気は自然となくなってしまうだろう。 第1回は、夫婦ふたりで営む「発酵農園」と、贅沢すぎる古民家ステイをお届けしました。第2回は、味のよさで評判の「走る豚」と、雑草を抜かない農法の「Nature-falo」を紹介します。
いま注目の放牧豚は、こんなふうに育っている!
熟成牛の卸しとして、有名レストランのシェフから絶大な信頼を集めている、草津の精肉店サカエヤ。 そのサカエヤが初めて扱った放牧豚が、こちらの「走る豚」だ。牛肉がメインのサカエヤだが、最近は豚肉専用の冷蔵庫を持つなど、力を入れているそう。 どんなふうに育てられているのか想像もできないが、経営者の武藤勝典さんに案内されて山の中に入っていく。感染症などには細心の注意を払わなければならず、全身をすっぽり覆う不織布のつなぎを着て行く。帽子も靴カバーもマスト。 森の中に入ると、元気よく遊んでいる豚ちゃんたちが! 「放牧地は東京ドーム5個分ほどあります。10アールの広さの放牧地は全部で30か所あり、そのうちの10か所に小屋を立てて、計150頭の豚を育てています。 使っていない放牧地は休ませたり、畑にしています。1か所の飼育が終われば、小屋を壊してまた別の場所に建てる。その繰り返しです。 壊した小屋も、豚たちがした糞や尿も、自然に分解されます。畑にしているところでは堆肥代わりにもなります。 土の中の菌や土壌のバランスを、時間をかけて元の状態に戻す。この循環が大事なので、自然に分解できる量しか豚を飼いません。1か所は15頭が限界です」 なんと時間と手間のかかる仕事だろう。お話を聞いている間も、豚たちは土を掘ったり、追いかけっこをしたり、楽しそうとしか言いようのない動きをしている。 「豚は穴を掘る習性があります。掘った穴に寝転がるのは、体を冷やしているんですね。餌は自然にあるものだけだと、さらに広大な広さが必要となってくるため、特別に作ってもらった非遺伝子組み換え原料の飼料をメインに与えています。他に放牧地の中にある葛、草、土、季節によっては筍、ドングリ、サツマイモ等を補助的に食べています。豚はなかなか賢いので、自分で食べ物を見つけてきますよ」 約24年前、この場所に産業廃棄物の処分場が作られようとした。水や酸素を産み出す環境を変えたくない。武藤さんのお父さんの計臣さんが、この地域の市民団体の方々と共に反対運動を起こし、なんとか土地を買い取ることに成功。「やまあい村」と名付けた。 「でも山林の中の土地なので、畑には向いていなかったんですよ。何を作っても効率が悪い。あるとき、元々飼っていた豚や鶏をやまあい村に放牧してみたら、豚や鶏は喜んで山を駆け回り、荒れかけていた土地を慣らしてくれたんです」 この体験から、本格的に放牧豚を事業化することに。 「抗生剤はできるだけ使わず、ホルモン剤は使わず、ストレスを与えず、できるだけ自然に近いもの、地域性のあるものを食べさせたい。手間もお金もかかるけれど、安全でおいしい豚を育てたい。水や空気を整える山地を、耕作放棄地やメガソーラーにしなくて済むように、日々頑張っています」 「走る豚」はいまやブランド豚になり、サカエヤなど卸しを通して全国のレストランで料理されている。レストランのメニューに「走る豚」を見つけたら、ぜひオーダーしてみてほしい。 「自然派きくち村」他で、肉や加工品も買える。詳しくは「やまあい村 走る豚」。