ストレスのない豚はおいしいに決まってる! 熊本県菊池の「走る豚」はみんな楽しそうだった
無農薬の梨とアスパラガスが大人気
祖父母の畑を3年前に引き継ぎ、独自の農法を展開しているのは、「Nature-falo」の坂口巧さん。見た感じも話しぶりも、まるで学者のよう。なんと脱サラだそう。 「もともと地質学をやっていたので、自然の流れですね。自然も土も植物も好き。自分がやっているのは、作物を育てるというより、土を育てること」 畑は土が見えないくらい草が生い茂っている。 「草を抜かない、というのが、大前提です。草を抜くと土が締まって固くなるので、結局耕さなくてはいけなくなります。土には元々、鉱物としてリンやカリが含まれているんですが、そのままでは作物は吸収することができない。草の根やそこに共生する微生物が使えるようにしてくれるんです。その繋がりを除草や耕耘で壊してしまうから、人間が肥料をやらなくてはいけなくなってしまう。 肥料を使うと、見た目は立派だけどメタボな野菜になるんです。そんな不自然さに病気や害虫が集まり、それを薬を使って抑えなければならなくなる。悪循環がずっと続くんですね。人間から見てきれいな畑は、実は不自然なんですよ」 草の合間には多種多様なハーブが植えられている。レモンマートル、レモンバーム、レモングラスなどレモン系だけで何種類も。それぞれ、ハーブティーにしたり、ハーブオイルや石鹸を作って販売している。 「ハーブには薬効もあります。例えばスイスミントはカメムシが嫌いな香りなんです。だから梨の畑のそばに植えています。梨は無農薬で作るのはほぼ不可能と言われていますが、そんなことはない。ただ、今年の夏の暑さは厳しかったですね。生では出荷できないものも大量にできましたが、ドライフルーツにしたら大丈夫でした」 祖父母のときはアスバラガス専門の農家だった。それはそのまま引き継ぎ、そして無農薬で育てている。こちらも通販で人気の品だ。 「草も抜かないし、自然に任せているから、作業自体はそんなに大変じゃないんです。人間が管理するのは必要だけど、過剰に保護するのはよくない。自分は農家でなく、微生物を育てている酪農家だと思っています。豊かな土を次につなげていきたいです」 坂口さんがもうひとつ力を入れているのは、竹林を育てること。ここで採れた筍を使った料理で、和食の料理人がU25の大会で優勝したそう。 「JALの機内食や大阪万博でも提供されるかもしれないので、楽しみにしています」