日本のテレビ番組「SASUKE」発の新スポーツ、ロス五輪の種目に採用…「聖地」目指す地域も
4年後のロサンゼルス五輪で実施される新種目の「聖地」になることを目指し、地域を盛り上げる取り組みが各地で始まっている。オブスタクルスポーツやクリケットなど日本ではなじみの薄い種目が多いが、大会誘致や種目が盛んな国との交流など成果は上々。関係者はさらなる熱気を期待する。(井上敬雄)
孫の代に残す
「体一つで挑戦できるのが魅力」。10月、徳島県吉野川市で開かれたオブスタクルスポーツの第1回日本選手権で10位に入った徳島市のジム経営、白川知明さん(40)が汗を拭った。つり輪をつかんで進んだり、約4メートルの壁を駆け上がったりと全長100メートルのコースにある12の障害物を攻略してタイムを競う。ロス五輪では近代五種の1種目として実施が決まっており、国内外の約80人が参加した。
日本選手権誘致の取り組みは五輪での実施が決まった昨年に始まった。日本協会が国際基準のコース建設を模索する中、人口約3万6000人と過疎化が進む地元の将来を案じていた住民の松島清照さん(67)が「活性化の起爆剤に」と、会長を務める建設会社から約4000万円を出資してコースを建設。松島さんは「五輪種目で海外の人も来る。孫の代に残る産業の芽になれば」と語る。
コースが4月に完成し、初めて大会を開いた際には延べ約3000人が訪れ、市内の宿泊施設約20軒がほぼ満室に。市も職員を大会スタッフとして派遣するなど支援に乗り出し、原井敬市長は「ここから五輪選手が羽ばたいてほしい」と期待する。
年1・3万人訪問
「クリケットのまち」として売り出すのが人口約11万人の栃木県佐野市。日本協会が2010年、市内に移転したのを機に地元経済界が普及を支援し、18年には市が約4億円で国際クリケット場を整備した。
五輪採用前から着目した背景には、インドを中心に競技人口が約3億人とされる種目を通じた地域活性化の狙いがあった。日本協会によると年間に大会関係者ら約1万3000人が市を訪れ、消費額は1億円超。国際大会開催などを通じてインドとの交流が生まれ、昨年は同大使館主催のビジネスセミナーを開催し、現地進出を狙う地元企業とのマッチングが進む。関係者は「五輪でさらに経済効果を」と話す。