台湾イベント火災の原因? カラーパウダーの「粉じん爆発」とは
台湾のイベント会場で6月下旬、大勢の若者らが突如パニックに陥る大規模な火災事故が発生した。音楽に合わせて若者らが踊る中、会場に噴出されたカラーパウダーに引火した「粉じん爆発」が原因ではないか、と専門家は指摘している。しかし、このパウダーの原料は主にトウモロコシなどの穀物だといい、これが爆発するとは普通には想像しにくい。どのような原理で、粉じん爆発は発生するのだろうか?
粉じん爆発が起きる3つの条件
台湾の国営通信社・中央通訊社のニュースサイト「フォーカス台湾」によると、6月27日夜、台北近郊のレジャー施設「八仙水上楽園」で屋外イベントが行われていたが、午後8時30分ごろ、ステージ脇から大量のパウダーが噴出した際、間もなく引火。瞬く間に、数百人が集まっていたダンスフロアが炎に包まれた。 目撃者は「突然一面が火の海になった」と証言。少なくとも510人が負傷し、そのうち183人が集中治療を受けたという。この原因は、空気中のパウダーに引火した「粉じん爆発」によるものだとみられている。 イベント中にパウダーが散布されるのは最近の新しい演出の手法で、危険だという認識の広い共有はなかったようだ。しかし、書籍「実務者のための粉じん爆発・火災安全対策」(オーム社、2009年)によると、実は穀物の粉が原因となった粉じん爆発事故は、国内外で多くの事例が報告されている。 例えば、穀物輸出大国の米国ではこれまで、サイロ貯蔵施設などで、穀物の粉じんによる爆発事故が多発している。中でも1978年には54人の穀物検査官や作業者が亡くなる大事故が起きた。日本でも、1931~2007年の間に、製粉工場や飼料工場などで17件の粉じん爆発事故が起きた記録がある。 同書によると、粉じん爆発の燃焼が起きる条件として(1)燃料、(2)着火源、(3)酸素――の3つを挙げる。「燃料」は空中に舞う微細な粉じん。この量は多すぎても少なすぎても爆発は起こらない。燃えるには、一定の酸素の量が必要だからだ。適度な燃料と酸素があり、そこに何らかの「着火源」(タバコや火花などか)が触れると、粉じん爆発が起こる、ということになる。 今回、台湾イベント会場のケースでは、不幸にもパウダーの濃度が濃くも薄くもない状態で空中に分散して舞い上がり、そこにたまたま、タバコや火花などといった着火源が作用した、という可能性が高いようだ。