リスク大きく儲からない”障害者の歯科治療”日本で最初に開業した男性(77)「おまえはダメだ」と言われた子供時代がバネに「人の役に立つ仕事がしたい」
■大分から福岡に通う男性 大分県日田市に住む44歳の男性は、34年前から緒方さんの治療を受けています。自閉スペクトラム症と重度の知的障害があります。 口の中の刺激に特に敏感で精神的に不安定になりやすいため、3人がかりで体勢を安定させ、麻酔も使ってリラックスした状態で治療します。 ほかにも、次の治療を視覚的に示すカードや、周りの音を遮断する耳当てなど、患者の障害特性にあわせて安定して治療ができるように様々な手法を確立してきました。 男性の保護者「地元の歯医者に行ったら息子が治療させないんですよね。ここはスタッフさんも揃ってますから、もう本人は嫌がらんでずっと行ってます。おかげで助かってます」 ■「ここにお世話になるしか・・・」 治療に通う子どもの保護者「多動だったし、だからもうここにお世話になるしかないかなぁと言う、もう普通のところは難しいかなぁと思って」 記者 Qきれいになりました? 患者「なりました。怖くなかった。」 ■「おまえはダメだ」と怒られ子供時代 障害者の歯科治療には、より多くのスタッフが必要なことから、利益を出しにくいこと。さらにリスクを伴う麻酔治療が欠かせないことから、歯科医師が手を出したがらない分野です。 緒方さんは「人の役に立つ仕事がしたい」と、あえて難しい分野に挑戦しました。 おがた小児歯科医院 緒方克也さん「子供のころ、親や兄弟から学校の成績などで『おまえはダメだダメだ』と怒られていて、自分の中ではそこまでダメじゃないのになぁと思っていました。障害者をとりまく環境は、いわば最初からダメと言われているようなもの。自分の幼い頃の経験から彼らに共鳴しました。障害者はダメな人ではないんだと。ダメにしているのは社会なんだ、といういうことを証明したかったんです」 そして、障害者のもつ可能性を花開かせたいと、福祉の分野にも取り組むことになりました。 おがた小児歯科医院 緒方克也さん「お母さんと接することがあって、この子を育てることの苦しさをお話になるんですね。どういう風に育てていくのかということも広く広まっていない時代だったから、そんな話を聞きながら、障害者の歯科治療でなくて、他の福祉の事にも関心を持ったんです」