実現遠いインクルーシブ教育…足りない教員、進まない少人数クラス「手厚いサポート得られない」。通常学級こそ改革必要
発達障害の子どもたちへの指導や支援を含めた特別支援教育がスタートして今年で18年目となる。学校関係者や保護者らに広く知られるようになり、特別支援学級などで学ぶ児童生徒は急増。教員不足や学びの質といった課題も見えてきた。鹿児島県内の現状を報告する。(シリーズ・かわる学びや@鹿児島~特別支援教育の今=10回続きの⑩より) 【シリーズ「特別支援教育の今」を初回から読む】まさか自分の子が…かつて無理解だった特別支援学級は今、急速に増える。上限8人の小所帯。「ここが、この子の居場所」
鹿児島市の小学5年男児が、特別支援学校(特支)から近くの小学校へ移ったのは昨年の春。兄や姉のように「地元の友だちがほしい」と望んだからだった。軽度の知的障害と自閉症スペクトラム障害があり、今は特別支援学級(支援級)に在籍する。 転学後、友人には恵まれたが、勉強に追いつけずに落ち込むことが増えた。地元中学へ進学を望んでいるが、学校側からは暗に特支を勧められるという。 母親(49)は「将来、自分の力で困難を乗り越えられるよう、さまざまな人が暮らす地域で育ってほしい」と願う。ただ、特支ほど手厚いサポートは得られない。「地元の学校に特支の場があったらいいのに。障害のある子もない子も共に学ぶインクルーシブ教育は夢のよう」とため息は深い。 ◇ 国連の障害者権利条約は、インクルーシブ教育を原則とする。日本も2014年に批准し、文部科学省はインクルーシブ教育システムの構築推進を掲げるが、現実は特支や支援級に通う子どもが増え続けている。22年に初めて日本を審査した国連からは、障害児を分離した特別支援教育の中止が要請された。
神戸大学大学院の赤木和重教授(49)=発達心理学=は、支援級急増の背景として「通常学級の在り方に無理が生じているのでは」と分析する。「みんな一緒」という同調圧力や、能力主義に対応できない子どもたちが通常学級から排除されていることを案じる。 現場にはまず、スムーズな学級運営のために同じ行動を求める「学級規律」の緩和を提案。「さまざまな子が過ごしやすくなるよう、小さなトラブルをすぐに問題にしないことも大切。子どもを信頼して成長を見守って」と呼びかける。 ◇ 「障害のある子の教育を改革するには、特別支援だけでなく学校教育全体の改革を」。9月下旬、鹿児島市であった全国障害者問題研究会(全障研)の九州地区集会。講演した全障研の薗部英夫副委員長(68)は、インクルーシブな学校づくりには、通常学級の少人数化や全校的な支援体制の確立が不可欠だと訴えた。 主催した全障研鹿児島支部の西園健三支部長(63)は、一律に通常学級へ戻せばいいわけではないとも強調する。「障害のある子を学びから排除してはならない。一人一人に合った環境を整えるため、試行錯誤を続けなければ」と語った。
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