金沢アートスペースガイド。最先端のアートやクリエーションに触れる8つのスペースを紹介(文:髙木遊)
RIVER
川のようにあり続けることは如何に難しいか。RIVERは、金沢の菊川地域にあるアートスペースで、かつての家電店を改装して作られたものである。犀川や菊川に由来するその名は、地域の歴史や人々の営み、そして無常を象徴している。スペースの創設者のひとりである長岡斉は、スケーターでありフィルマーでもある。その活動を通じてつながった友人や知り合いに、アトリエや宿泊場所として自由に使ってもらいたいという思いでマイペースに運営されている。普段訪れることは難しいかもしれないが、長岡が営むもうひとつのスペース、片町のミュージックバー「donuts」は常時オープンしている。そこには、長岡を中心とした金沢のカルチャーシーンについて知る機会がある。
PAUSE KANAZAWA
PAUSEは2024年3月に金沢で誕生したアートスペースで、「予感」に満ちた場である。BYTEN、pick pho、SANKAK、VALEURの4つがそれぞれギャラリー、飲食、スイーツ、アパレルを営み、調和しながら訪れる人々を迎え入れている。ここでは飲食やアートに加え、来訪者同士が自然に交流し、混ざり合うコミュニティの醸成が目指されている。内装は現代のカルチャーと日本家屋が調和しており、中央のホールには空間に余白が残され、二方向の入り口や梁が象徴的な役割を果たしている。PAUSEはまだ発展途上で、24時間営業なども構想されており、訪れる人々がその場で何を感じ取るかによって空間の価値が変わっていく、金沢のネオ公民館を目指す。
POOL SIDE GALLERY
POOL SIDE GALLERYは、2024年春に金沢21世紀美術館近くにオープンしたギャラリーである。1881年創業の九谷焼の老舗・高橋北山堂が所有するビルの2階に位置し、ガラス張りの北側から開放感を感じられる。隣の美術館のプールにちなんだ名前には、ユーモアとともに金沢の伝統的なエリアに軽やかさを添える意図が込められている。このギャラリーは、加賀藩時代から続く石川の工芸文化を背景に、現代美術と伝統工芸の融合を目指し、金沢の地元作家だけでなく、関東、関西の作家も精力的に紹介している。金沢にてさらなる現代アートシーンを拡張する意気込みゆえの取り組みだ。じつは、このスペースは3つのギャラリーによって運営され、それぞれが金沢とつながりをどのように醸成していくかが期待される。
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