金沢アートスペースガイド。最先端のアートやクリエーションに触れる8つのスペースを紹介(文:髙木遊)
金沢アートグミ
作品や作家を支える文化の土壌を耕すことは、非常な根気と時間を要する。それは、ひとつのキュレーションの在り方とも言える。金沢アートグミは、金沢の市民アートシーンを育むNPO法人で、今年15周年を迎えた。建築家・村野藤吾氏設計の北國銀行武蔵ヶ辻支店の3階に拠点を構える。美術館では取り上げられにくい若手や地元アーティストの展示をはじめ、企業とのアートコラボレーションのコンサルティング、アーティスト支援に力を入れている。2009年に設立され、市民の参加を促し、展示スペースの提供だけでなく、アーティストの仕事やネットワーク支援という重要な役割を担っている。
FOC
FOCは2023年に始動した新たなスペースである。展示空間は洗練されたホワイト・キューブで、内装設計は建築家・中川俊之が担当している。代表の宮田大がクリエイターであることがひとつの強みであり、彼はエッジの効いた企画を提案するクリエイティブカンパニー「Konel」の創設メンバーでもある。「実験的で新しいことを直感的に行う場所」としてFOCを立ち上げた。創造行為に関わる共通言語を駆使し、感性を加速させる企画を策定している。アーティストやクリエイターとともにプロジェクトを展開し、領域横断的なアーティストの個展など、実験的なプロジェクトが行われている。
芸宿
同時代性といえば大げさかもしれないが、その時、その場に居合わせた者だけが享受できる瞬間がある。それがそのまま継続されているのが芸宿だろう。芸宿は金沢の天徳院参道近くに位置するアーティストランのスペース兼コミュニティで、住居、ギャラリー、宿泊所、図書室など多彩な機能を持つ。2013年に創設され、2018年から現在の場所で活動している。入居者は金沢美術工芸大学の学生を中心に、年齢やバックグラウンドに縛られず共同生活を営んでいる。共同の自治という難しい課題にも長年取り組んでいる。一見入りづらいが、ぜひ足を踏み入れてほしい場所だ。そこには確かに表現の萌芽が存在している。
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