「10・27衆院選」は小泉進次郎首相になっても困難か “本命”「11・10」だが、米大統領選後解散の可能性も
そこで、3年前の岸田文雄政権発足時の衆院解散を巡る動きを振り返ると、岸田氏は10月4日に召集された臨時国会での首相指名・組閣を受け、同日夜の首相官邸での記者会見で「10月14日に解散する」と明言。立憲民主の安住国対委員長も「受けて立つ」とこれに応じ、その時点で衆院選の10月31日投開票が決まった。その裏舞台について当時の岸田首相側近は「岸田総理が組閣後の会見で解散日を明言したことで、公職選挙法上はその時点で解散されたとみなされ、『10・31投開票』が決まった」と解説した。
仮にこれを今回に当てはめれば、新首相が10月1日の組閣後の記者会見で「衆参代表質問が終了予定の10月9日か翌10日の解散断行を宣言すれば、『10・27投開票』が可能となる」(自民国対)とみられている。ただ、前回と違い、野党側は「衆参両院予算委質疑や党首討論開催」などを求めており、「国会日程は政府ではなく与野党協議に委ねられるので、前回と同様の戦略は通用しない」(同)との見方が広がる。 小泉氏は、総裁選での討論開始時から「われわれは今、総理大臣になったら何をするのか話している。それまでの主張をガラッと変えて選挙をする人はいますか?」と述べる一方「政治と金の問題があって、早く国民の皆さまに信を問うたことを礎として政権運営をしなければ、どんな政策も前に進まない」と繰り返している。しかし、石破氏だけでなく他候補も「解散前の丁寧な国会審議」を否定しておらず、小泉氏が突出している状況だ。
■「10月解散」ならASEAN首脳会議への新首相出席も難題に そうした中、各種世論調査などで予想外の苦戦が伝えられている小泉陣営では「国民からみても解散を巡る小泉氏の発言が国会無視と受け止められると、さらなるダメージになりかねない」(無派閥若手)と不安視する声が広がり、ここにきて小泉氏の発言ぶりにも慎重さが増している。 15年ぶりの公明党代表交代による退任が決まった山口那津男代表は、14日の東京MX「田村淳の訊きたい放題!」で、次期衆院選について「早ければ10月27日。準備は大変だが可能性はある。11月10日も可能性がある」と指摘したうえで「幅があるが大体どれかになる。どうするかは次の首相が選ぶ」として新首相の判断が優先するとの見方を示した。
ただ、本命に浮上した11・10投開票となると、外交日程も絡んでくる。というのも、現職首相が毎年出席している東南アジア諸国連合(ASEAN)と日本が関連する首脳会議は、ラオスで10月10日ごろに開かれる見通しだからだ。政府部内では「これに新首相が行くとなると、解散断行が想定される10月9日と完全にぶつかる」(外務省幹部)と頭を抱える。自民党内には「衆院選への対応を優先し、新首相が首脳会議を欠席するという選択肢もある」(閣僚経験者)との声もあるが、「誰が首相になっても、対応次第でトップリーダーとしての資質も問われる」(自民長老)ことになりそうだ。
泉 宏 :政治ジャーナリスト