「クライマックスの料理シーンをもう一回見たい」というシェフも! プロの料理人も涙「グランメゾン・パリ」のリアル
一方『グランメゾン・パリ』で描かれたのはフランス料理という「型」の強さだ。 『グランメゾン・パリ』ではさまざまな国のルーツを持つ人が働いているという設定になっており、映画では彼ら一人ひとりの異なる個性や強みをすべて料理の中に盛り込むことで、伝統あるフランス料理が革新されていく様子が描かれる。 尾花は、かつて自分がフランス料理を志したのは、フランス料理の多様性に対する懐の深さに気づいたからだった、という自らの原点を思い出す。たとえ白味噌を用いてもフランス料理になる。その自由さから新しい料理が生まれるという設定は、現実世界と同じだ。
■ドラマに自分の生き方を投影するシェフたち 料理関係者たちは、映画で登場する料理や料理人の生き方に自らの生き方を重ねているようだ。 2019年の連続ドラマでは、毎回、料理人の生き方をめぐるテーマが盛り込まれていた。 たとえば、若手がシェフに努力を認めてもらえないときどう乗り越えるかが描かれた第6回、仕事と家庭の両立を描いた第7回、病気と老い、仕事へのモチベーションをとりあげた第8回など、どの回にも料理人の生活や才能に関する悩みや「あるある」が詰まっていた。
北海道・函館にあるレストラン「maison FUJIYA」オーナーシェフ藤谷圭介さんは、映画公開後すぐに見に行ったひとりだ。 「(映画の中の)料理を見ながら、自然と涙が流れていました。私自身フランス料理を作る料理人として、常にさまざまな葛藤を胸にレストランで働き、函館という地方都市で日々お客様を迎えています。今回の映画を観て、料理人という仕事の素晴らしさや、レストランが夢を与える存在であることをあらためて感じました」(藤谷さん)
ほかにもSNSでは、役者の料理する所作に注目したり、シェフというポジションの孤独さに共感したりする感想が聞かれた。メッセージをくれたシェフの中には「クライマックスの料理シーンをもう一回見たい」という感想もあった。 ■進化と革新を続けるフランス料理の「強さ」 尾花や倫子たちがミシュランの本拠地フランスで三つ星を目指すという、これまでなら荒唐無稽ともみなされそうな筋書きは、小林圭さんが2020年にフランスで三つ星を獲得した事実によって、ぐっとリアリティを増した。