「推し」について語って気づく「自分の人生も捨てたもんじゃないな」 主体的に楽しむことの効用とは?
アイドルと宝塚をこよなく愛する書評家・三宅香帆さんが、長年培ってきた文章技術を「推し語り」に役立つようにまとめあげた著書『「好き」を言語化する技術 推しの素晴らしさを語りたいのに「やばい!」しかでてこない』から一部を抜粋・再編集し、「推し語り」のコツやヒントを3回にわたってご紹介しています。3回目の本記事では、「推しの素晴らしさをSNSで発信する」ときのコツやヒントについてお伝えします。 【表で確認】「推し」のジャンルの世代別比較が意外に面白い 1回目:「やばい」以外の“自分の言葉”で「推し」を語るコツ
2回目:“推し”へのファンレター「自分の言葉」で書く方法 ■「推し」への言葉は、自分の想いを見失わない鍵 怖い思いをしてまで、推しについて自分の意見をSNSで表明する理由って、なに? と首を傾げられるかもしれません。 勇気をだしてまで、推しについて書かなくてもよくない? もちろん、SNSに必ず書く必要はありません。日記やメモに書いて、自分ひとりのなかに留めておくだけでもいいのです。 どんなものに書くとしても、本当に大好きな推しがいるなら、推しについての自分だけの言葉を持っておくことは、すごくすごく重要なことです。なぜなら自分の揺るぎない言葉を持つことは、きっとあなたの「推し」──つまり好きな存在を好きでいることへの信頼につながるからです。
ちょっと個人的な話をさせてください。私の場合、宝塚のあるトップ娘役さんが大好きだったんですが、ある日その人が退団してしまうことが決まり、悲しみに暮れていました。 でも、その人の好きなところ──私はとにかく彼女の踊っている姿が大好きでした──をSNSやブログに書いているうちに、「あんなに美しく踊っている姿を私に見せてくれたことに感謝すべきだよな……退団を悲しんでいる場合ではないよな」と思えて、なんだか立ち直ってきたんですよ。
これは私の一例にすぎませんが、推しっていろんなことがあるじゃないですか。私が経験したように、退団や卒業がいきなりやってくることがある。スキャンダルを起こしてしまうこともあるかもしれない。世間をざわつかせる騒ぎを起こすことがあるかもしれません(縁起でもないですが)。 そんなとき、世間や他人の声に惑わされず、自分の推しに対する想いを言葉にすることができたら、推しに対する大切なものを見逃さずにすむはずです。