「自分を解放することで、人とちゃんと向き合えるようになった」三吉彩花が語る“ありのまま”の尊さ
家族と向き合う時間が、大きな一歩になった
──三吉さんにとって、初めての石井裕也監督作品です。 長年一緒にやられてきた石井さんと池松(壮亮)さんのすでに出来上がっている信頼感の中に、何も知らない者がポンッと飛び込むのはやっぱり難易度が高くて、どうやってうまく溶け込んだらいいのかなという戸惑いはありました。でもそれが三好の役としてもちょうどバランスがよかったというか。 今回は池松さんも和気あいあいと現場を回すというより、一歩引いた立ち位置から現場を大きい懐で優しく見守る感じでしたし、石井監督の演出も的確で、そういった意味ではいい空気感でやれたと思いますし、すごく面白い現場でした。 ──今回、Bezzyではリレーインタビューということで、先にお話をいただいた石井監督から三吉さんとの思い出を聞いています。ご家族とずっとわだかまりがあったところを、今回の撮影に臨む前にちゃんと話をしに行かれたそうで。そこについて監督は誠実だなとおっしゃっていました。 家族との向き合い方についてはずっと考えていたことではありました。私は7歳からこの仕事を始めたんですけど、それより前の幼少期の両親のイメージとか、当時の環境が原因ですごく大きなコンプレックスを抱えていたんですね。それによって今も左右されているところがあって、ここから先、自分が表現者として次のフェーズに進む上で何かを変えないといけないという意識はずっとありました。 そんなときに、この映画のオファーをいただいて、『本心』というタイトルと向き合うために、私自身がまずは家族と向き合わなければいけないと思ったんです。ちょうどそれが6月で、私の誕生日だったのもあって、いろいろといいタイミングだったんですよね。 ──家族と向き合う時間はどんな影響をもたらしましたか。 それが良い方向に転んだのか、悪い方向に転んだのかということは、私にとってはあまり重要なことではなかったんです。それよりも、家族と向き合う時間をつくれたこと。それが、何よりも大きな一歩になった。そう考えると、このタイミングでこのお話をいただけたことは本当にありがたかったなと思いました。 ──三吉さんの次は、池松さんにお話を伺う予定です。池松さんとの思い出を聞かせていただけますか。 現場の人には知られたくなかったので言ってなかったんですけど、実は撮影中に三好という役に向き合うことが精神的にすごくしんどくて、1回、パンクしかけちゃったことがあったんですね。そのときに相談に乗ってくれたのが池松さんでした。私が涙をこぼしながら話していることに対して、池松さんがある言葉をくださって、その言葉があったから最後まで撮影を乗り切れたと言ってもいいくらい、スッと私の心の中に入ってきたんです。だから、池松さんにはすごく感謝しています。 ──池松さんが何とおっしゃったのかお聞きしてもいいですか。 私は大丈夫なんですけど、池松さんがどう思われるかわからないので、よかったら池松さんに聞いてみてください。 ──わかりました。そうさせていただきます。 あと、そのときに池松さんに「池松さんって性格が悪くなる瞬間ってあるんですか」と聞いておいてもらってもいいですか。 ──性格が悪くなる瞬間、ですか(笑)。 池松さんって本当にいい人なんです。作品に対する思い入れも強くて、現場では常に集中していらっしゃるし。そんな池松さんが性格が悪くなる瞬間があるのか気になって(笑)。ぜひ聞いてみたいです。