「自分を解放することで、人とちゃんと向き合えるようになった」三吉彩花が語る“ありのまま”の尊さ
Bezzyによる映画『本心』特集。リレーインタビュー第2弾は、俳優の三吉彩花。 AIを駆使したVF(ヴァーチャル・フィギュア)技術によって蘇った母。息子・朔也は、より生前の母に近づけるため、母が親しくしていたという年の離れた友人に連絡をとる。そこで登場するのが、三吉演じる三好彩花だ。 セックスワーカーという過去を持つ三好は、災害によって住まいを失ったことから、朔也と同居生活を送ることとなる。三好は、朔也の運命を変えるヒロインなのか。それとも混乱へと陥れるファム・ファタールか。難役を前に「1回、パンクしかけちゃった」と明かす三吉を支えたのは、ある共演者との思い出だった。 【撮り下ろし多数】モデル・女優として国際的に活躍し、今年の釜山国際映画祭でライジングスター賞にも輝いた三吉彩花
ネットのネガティブな言葉は真正面から受け止めない
──もし現実世界にもVF技術があるとして、三吉さんは朔也と同じ立場に立ったとき、同じ選択をとると思いますか。 とらないと思います。この映画の中でも、死んだお母さんの“本心”が知りたくて、朔也はVFを利用するけど、その結果、知りたくなかったことまで知ってしまったり、お母さんなんだけどお母さんではないような戸惑いに朔也自身も壊れていく。きっと現実にこういうことがあったら同じようなことになるんじゃないかなと思うんです。 それよりも、生きている間に対話を重ねて、どこまでわかり合えるかに意味がある。そこでもしその人の“本心”を聞き出せなかったなら、それはそういうことなのかなと考えるタイプですね。 ──三吉さんは、映画の中で描かれているようなテクノロジーの進化についてはどう考えていますか。 仕事のツールとして使うこともあるので、ポジティブな面ももちろんありますけど、実際にこうしたデジタルテクノロジーがどれだけ世の中を変えたかというと、やっぱりネガティブな面に直面することが我々の仕事はすごく多いので。恐怖を感じますし、別の軸で大事にする部分が自分の中にないと、結構しんどいだろうなと思います。 ──ネガティブな面に直面するというのは? インターネット上のやりとりですよね。顔が見えない分、それこそ“本心”がよくわからない。何を考えてそういう言葉を投げかけているのか、こちらも意図が汲み取れないですし。悪意なく言ったつもりの言葉が、重大な事態を引き起こすきっかけにもなる。もう少し一人ひとりが慎重に考えるべきじゃないかなとは、やっぱり思いますよね。 ──三吉さんはネット上でネガティブな言葉を投げかけられたらどうしますか。 真っ正面から受け止めないようにしています。そういう言葉を目にすることはたまにありますけど。直接の知り合いではない人からの言葉ですし、それを必要以上に深刻に受け止めることはないんじゃないかなって。 ── 一方で、デジタルテクノロジーをポジティブに活用している場面というのもありますか。 ゲームをその部類に入れて良いなら、ゲームですね。よくオンラインゲームで、全然知らない人と一緒にバトルロイヤル系のゲームをしています(笑)。 ──え。じゃあ相手は三吉さんだと知らずに一緒にプレイしていることも? ありますあります(笑)。画面を通すことでリアルじゃなくなる。その解放感が好きで、『モンスターハンター』とか『PUBG』はのめり込みやすいですね。逆にリアルとの境界線がわからなくなる感じのゲームはちょっと苦手で。実在の街を舞台にしているゲームもありますけど、そういうのをやっていると自分も本当に銃を扱えるんじゃないかと錯覚を起こしちゃうんですよね。ゲームを終えた後に街に出ると、誰かに狙われている気がして、ちょっと警戒心が強くなっている自分がいます。そういうのはやっぱり少し怖いかな。だから、映画で登場するVFの世界も決して遠くない話なんだろうなという気がします。 ──ご自身が演じた三好彩花という女性をどう捉えていましたか。 人にふれられないといった難しい性質を持ちながらも、嘘は嫌いという自分の軸が通ったところもあって、弱くもあり、強くもある女性だと思いました。 ──強くもある女性なんですね。彼女の経歴を考えると弱さのほうにフィーチャーしてしまいそうになりますが、強さに着眼したところが面白いなと思いました。 もともと私が人の弱いところより、強いところやポジティブなところに注目するタイプだからかもしれません。彼女自身、そのせいで怖い思いもしたけれど、生きていくために必要な手段だったわけで、セックスワーカーだったという経歴を後悔しているわけでもないんですよね。その過去も踏まえた上で朔也と出会い、彼女は新しい一歩を踏み出そうとする。そこにフォーカスを当てたので、自然とそういう考え方になりました。