1万件超の事案を手がけた元裁判官が「人生を棒に振らないための実用書」を書いたワケ
「予防法学」って何ですか?
―― 本書で使われている「予防法学」という言葉は初めて聞きました。具体的には、どのような概念なのでしょうか? 瀬木言葉どおり、「紛争予防のための法律知識を普通の市民にも理解できるようなかたちで体系的にまとめた、そのような意味での、わかりやすい法律学」ということですね。 法的紛争全般の防止のためには、個別的、断片的な知識だけでは不十分なのであり、それらを統合するような一つの視点、法的感覚、法的リテラシーが必要なのです。 本書では、個々の分野について紛争・危険防止のための知識・情報を説いてゆく前に、その前提、総論として、右のような法的感覚、リーガルマインドを身につけるための「予防法学」というコンセプトとその基本的な内容について簡潔に論じています。 予防法学という言葉自体は古くからありますが、それが論じられるようになってきたのは比較的最近のことであり、また、主として企業法務や契約の関係においてです。本書で論じたようなコンセプトのそれをまとまったかたちで体系的に示したものは、これまではあまり例がなかったはずだと思います。 次回「近親間の不動産の貸し借り」「暗闇で違法駐車に衝突」…「人生の地雷」を踏まない方法を、1万件超の事案を扱った元・裁判官が伝授するでは、いよいよ具体的な法的紛争についてお話を伺います。人生は地雷原を歩いているようなもの。どうすれば地雷を避けられるのか? 元エリート判事にして法学の権威として知られる瀬木比呂志氏の新作、『現代日本人の法意識』が刊行されます。 「同性婚は認められるべきか?」「共同親権は適切か?」「冤罪を生み続ける『人質司法』はこのままでよいのか?」「死刑制度は許されるのか?」「なぜ、日本の政治と制度は、こんなにもひどいままなのか?」「なぜ、日本は、長期の停滞と混迷から抜け出せないのか?」 これら難問を解き明かす共通の「鍵」は、日本人が意識していない自らの「法意識」にあります。法と社会、理論と実務を知り尽くした瀬木氏が日本人の深層心理に迫ります。
瀬木 比呂志(明治大学教授・元裁判官)