1万件超の事案を手がけた元裁判官が「人生を棒に振らないための実用書」を書いたワケ
一生の中で遭遇するあらゆる法律紛争が避けられる
―― こうした法律実用書は、弁護士によるものが大半ですが、そんな類書との違い、また本書ならではのセールスポイントは、どういうところにあるのでしょうか? 瀬木そうですね。「正確さ、わかりやすさ、深さ、興味のもてる書き方、体系的な記述」といったところかと思います。 この本では、先にも述べたとおり、私の裁判官と学者双方の経験、また調査研究に基づいて、普通の日本人がその一生の中で出あいうるような紛争・危険を、各法律分野ごとに網羅し、それらを予防するための方法を、学生や若者を含めた広い範囲の読者を念頭に置きながら、詳細に、かつできる限りわかりやすく正確に、解説しています。 また、必要に応じ、紛争が起こった場合の対処方法、それぞれの分野の法律論や制度論の基本とその問題点についても、論じています。 さらに、理解をより具体化していただくために、私が裁判官時代に経験した各種の事案やそれらに関連したエピソードも、かなりの数紹介しています。 これらの記述によって、個々の紛争・危険防止のための断片的な知識、情報にとどまらず、その全体をカヴァーする「紛争を生じさせないための危機管理の方法やヴィジョン、また、法というものについての考え方」をも、理解していただけるのではないかと思います。 また、本書を熟読していただければ、不可抗力的なものを除き、普通の日本人が一生の間に遭遇するような法的紛争のほとんどが避けられるのではないかとも、思っています。 ―― 確かに、弁護士等による類書に比べると、記述は、高密度でありながら、霧が晴れたようにクリアですね。普通難しく感じるような事柄、たとえば遺産分割や遺留分減殺等の相続法の問題でも、非常にわかりやすいです。 カヴァーしている範囲も、よくこれだけの分量の書物で、と思うほど広く、私がおよそ考えつかないようなものまで漏れなく押さえられていて、驚きました。 瀬木ありがとうございます。 なお、本書では、新書としては初めて、独学やリベラルアーツ関連の書物等で試みた、ですます調の、親しみやすくかつ興味のもてるような語り口をも、用いています。