メルセデス・ベンツEクラス 詳細データテスト ディーゼルセダン健在の証明 快適性は改善の余地あり
はじめに
昨年は、新興メーカーの新型車も数多くテストしたが、その対極にあるのが今回のテスト物件だと言える。 【写真】写真で見るメルセデス・ベンツEクラスとライバル (17枚) 無論、クラシックカーを連れてこようと言うのではない。しかしEクラスといえば、世界最古を謳う自動車メーカーのラインナップでもとりわけ長い歴史を持つもののひとつだ。 新型となるW214型を、メルセデス・ベンツ流にカウントすると1947年からほぼ途切れることなく続く系譜の10代目ということになるらしい。 と、ヘリテージへの言及に今回は随分気を遣っているが、それがなぜかと思わされるくらい、普段のメルセデスは特別なノスタルジックさを持たない会社だ。初代Aクラスやスマート・シティクーペの前衛的なデザインを見れば、それはよくわかる。最近では、容赦無く空力を追求したEV群に、その性格が顕著だ。 BMWが5シリーズのバリエーションとしてi5を設定したのとは対照的に、メルセデスはEセグメントEVのEQEとは別にICE車のEクラスを用意した。彼らがいうには、新型Eクラスには伝統と現代性のバランスが必要だったのだとか。トラディッショナルな上級セダンと、将来を支える先進技術を用いたEVとの架け橋になる存在だというわけだ。 まだまだ走るスマートフォンみたいなクルマを愛車として迎え入れられないというユーザーは多い。となれば、新型Eクラスに課されたミッションはひとびとの心を捉えるものとなるに違いない。その成否を占うべく、われわれは今回、敢えて俎上にEVの対極とも言えるベーシックなディーゼルモデルを載せることとした。
意匠と技術 ★★★★★★★★☆☆
外観を見る限り、ミュンヘン発のライバルに大きな影響を受けることはなかったようだ。ワゴンも用意されるが、セダンモデルの3ボックススタイルは堅持され、ボンネットは長く、トランクリッドは明確に区切られている。全体的にラインはクリーンで、見栄えのいいディテールが多少加わるが、虚飾は極力廃されている。 当たり障りないグッドルッキング。アイボリーベージュに塗られたタクシーが、フランクフルト空港にズラリと並ぶ光景が目に浮かぶ。 メルセデスは構造面のエンジニアリングをあまり詳細に語っていないが、これは先代モデルの発展版だからだ。5シリーズと違ってEクラスは、EVモデルとプラットフォームを共有する必要がなかった。また、ICEとPHEVのノウハウは、数十年にわたってほぼ完成させている。 とはいえ、PHEVのバッテリー置き場は相変わらず頭痛の種だ。ガソリンとディーゼルではわずかながら5シリーズを凌ぐトランクスペースが、PHEVでは優劣をひっくり返されてしまう。530eは520L確保している容量が、E300eは370Lしかないのだから。 Eクラスを擁護できるとすれば、そのバッテリー性能の優位だろうか。容量は総容量25.4kWh/実用容量19.5kWhで、EV航続距離は109km。対するBMWは22.1/18.7kWhで93kmだ。 ラインナップは先代ほどではないが、ガソリンもディーゼルも揃えてきた新型Eクラスのなかで、今回のE200dに搭載されるユニットはキャリーオーバーだ。メルセデスのモジュラーエンジンファミリーの一員であり、乱暴にいえばE450dに積む直6を2/3に切り詰めたものだ。過給は可変ジオメトリーターボで、エンジンとギアボックスの間には23psのモーターをサンドウィッチ。48Vマイルドハイブリッドとして、スターター/ジェネレーターと加速アシストを行う。 サスペンションに大きな驚きはないが、残念な話もほとんどない。フロントが4リンク、リアが5リンクで、PHEVを除くモデルには15mmダウンの実質的なスポーツサスペンションであるアジリティコントロールサスペンションが装着される。 ダンパーはパッシブの周波数選択式で、ドライバーがセレクトできるモードはないが、入力の周波数に応じたバルブ作動が得られる。理論上、ロールのような低周波数の動きでは硬くなり、荒れた路面からの突き上げのような高周波数に対しては和らぐという設計だ。 スチールコイルにアダプティブダンパーの選択肢はない。後輪操舵と合わせてエアサスが設定される市場もあるが、英国仕様には導入なし。十分な需要が見込めない、ということらしい。ただしワゴンは、リアのみセルフレベリング用のエアスプリングが備わる。