メルセデス・ベンツEクラス 詳細データテスト ディーゼルセダン健在の証明 快適性は改善の余地あり
内装 ★★★★★★★★☆☆
メルセデスのいう架け橋が、昔ながらのインテリアを含むものだと期待していたら、そこは裏切られる。テスト車はスーパースクリーン仕様で、全面にディスプレイが埋め込まれていた。それでも、MBUXの使い勝手は、インフォテインメントシステムとしてはベストクラスだ。 ほとんどのインターフェイスは、現行メルセデスに共通するものなので、操作は大きなディスプレイと、列をなした走行モードや車両セッティングを担う実体ショートカットボタンで行う。 あまり使わない機能の呼び出しは、進化した音声認識を使うといいだろう。無駄なアンビエントライトの調整にメニューを探すくらいなら「ヘイ、メルセデス。ムードライトを黄色にして」と照れを捨てて口にしたほうが手間が省ける。 使い勝手が後退したのは空調関係だ。ほかのメルセデスは、温度と風量の調整が画面上に常時表示されているのだが、このクルマはメニューを開く必要がある。それによって画面の表示面積を節約できるというわけでもなさそうだし、第一使いづらくなった。 最近のメルセデスで批判してきた質感については、完全に元戻りはしていないが、低下傾向に歯止めはかかったようだ。ほぼどこもソリッドな作りで、マテリアルもいい感じのものを使っている。 ICE搭載のセダンとしては、実用性もなかなかのものだ。シフトセレクターをステアリングコラムに設置するので、高さのあるセンターコンソールは収納スペースに充てられる。カーペット敷きのドアポケットもかなり大きい。 EVを見慣れると、物足りなく感じるようになるのが後席レッグルームだ。そうはいっても、新型5シリーズにはわずかながら勝り、ヘッドルームは背の高い大人でも十分余裕がある。そうそう、ICEモデルであるE200dのトランク容量は、BMW520iを20L上回っている。
走り ★★★★★★★★☆☆
大型の上級セダンに、2.0Lディーゼルのマイルドハイブリッドでは、その字面を見る限りもはや時代遅れのパワートレインだと思えるはずだ。英国BMWはそう考えたようで、520dや530dを導入しなかった。 ところが、E220dに乗ると、ほどなくそれを考え直す。EVやPHEVの税制優遇を考えなければ、この手のクルマとディーゼルの相性はバッチリだ。 ディーゼルといっても、そう聞いて想像するようなガサツさや騒々しさは微塵もない。コールドスタートでも、街乗りでも、限界を試す性能テスト中であっても、このOM654Mユニットは静かに回り、エンジンルームがはるか遠くにあるように思わされる。 また、マイルドハイブリッドではアイドリングストップを切りにくいものもあるが、このクルマのスタート/ストップは楽にカットできる。とはいえ、その必要をめったに感じなかったのは、エンジンの停止と再始動がじつに早くスムースだったからだ。 実測1917kgという重量で、湿って凍てついたテストコースに入ったにもかかわらず、E220dはスタンディングスタートから7.2秒で97km/hに達した。これは2017年に計測した先代520dを0.2秒凌いでいる。EVやハイブリッドであればどうということのない数字だ。アウディA6 50 TFSIeは5.7秒をマークしている。しかし、その無理のない感じはみごとで、そこにこそ真の価値がある。 まず最初に、提供されるパフォーマンスが一定している。バッテリー残量に左右されるPHEVなどとは決定的に異なるところだ。エンジンと9速ATとの協調性も、ほぼすべての場合ですばらしい。多くのギアボックスにみられるような、エンジンに対する遅れで悩まされることもなく、豊かなトルクを生かすために行う1~2段のシフトダウンもクイック。しかし、レッドラインまで回し切ってしまうことはない。 それでも、批判の的はギアボックスとなってしまう。ほぼほぼスムースなのだが、思いがけないところで油断を見せるのだ。交差点で減速したところから、信号が青になって急に再加速するような、さもなければ混み合ったジャンクションを急加速で抜けるような場面で、シフトダウンして接続するのに間が空いてしまうのだ。 シフトパドルはEクラス全車に標準装備されるが、マニュアルモードの選択方法ははっきりしない。ディスプレイのメニューを探らなければならないのだ。理想的な方法ではないが、メニューを見つけるのは難しくない。それに、ディーゼルのサルーンは、マニュアル変速を積極的に使いたい類のクルマではない。 ブレーキ性能に関しては、パフォーマンス志向のサマータイヤには、凍りそうな湿った路面でのテストが厳しかったというのが大きい。113km/hからの完全停止に56.2mというのは長かった。おもしろいのは、ESPをカットしてみたら4mほど伸びたことで、加速中だけでなく、減速中の車両安定にもこの電子制御が効いていることを証明できた。 電動化したメルセデスの大きな弱点となっているペダルフィールは、普段使いでは上々だが、緊急ブレーキではソフトな感じだ。